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目次

考えようくらし 調べよう経済

中学生のためのなるほど経済入門

はじめに

第1章シジョウとイチバ

価格

流通

第2章働くことと雇うこと

雇用

失業

起業

第3章お金を貸すこと借りること

銀行

保険

株式

第4章政府のしごと

財政

税金

社会保障

規制緩和

第5章世界にひろがる経済

貿易と為替

グローバル化

第6章豊かさとは何か

経済成長

景気

環境問題

第6章 豊かさとは何か

1 経済成長

経済は生き物!

 経済は、家計、企業、政府という三つの「主体」が活動を繰り広げる生き物です、生き物ならば成長もするでしょうし、病気でやせたりもしますよね。君たちが、毎年、学校で身長や体重を測定して、身体の成長を測るのと同じように、日本という国全体の経済についても、去年に比べてどれくらい大きくなったのかを測ります。経済の大きさと伸び率をどのようなモノサシで測るのか、そこから何が見えてくるのかを学んでいきましょう。

1 経済の大きさを測るモノサシ

クイズ1

 一国の経済の大きさを測るモノサシとして使われるものは、次のどれ?

@ GAP  A GDP  B GHP

解説

 GDPはGross(総) Domestic(国内) Product(生産)の頭文字を並べたもので、日本語では「国内総生産」といいます。一定の期間内(1年間または1四半期)に、国内で新たに生産されたモノ・サービスの「付加価値」をすべて足し合わせたものです。

 GDPの大きさが、国の「豊かさ」を示すひとつのモノサシとされており、その伸び率のことを「経済成長率」といいます。経済成長率がプラスのとき、経済は成長しているといい、マイナスのとき、経済は縮小しているといいます。

考えてみよう1

@ 身長150cmの生徒が、1年間で165cmになりました。成長率は何%?

A ある年のGDPが500兆円だった経済が、1年間で515兆円の規模になりました。成長率は何%?

付加価値って何?

 自分(または自社)が「新たに生み出した価値」のことです。すでに他の人(または会社)が生み出した価値を、自分のつくったものの価値から差し引く必要があります。

 たとえば、自動車を作るには、鉄、非鉄金属、板ガラス、プラスチック、エンジン、繊維、電子部品などの原材料・部品を必要とします。これらの原材料や部品にかかった費用を、自動車の売値(販売店への卸値)から差し引いたものが、自動車一台を作ることにより新たに生み出された価値、すなわち、付加価値なのです。

答え(模範解答)

●クイズ 1……A

考えてみよう1……@(160−150)(cm)÷150(cm)×100=10(%)

         A(515−500)(兆円)÷500(兆円)×100=3(%)

(イラストあり)

(例)160万円の原材料・部品を用いて、設備と機械を使って人が組み立てた自動車一台を200万円で販売店に卸せば、付加価値は40万円です。このことから、付加価値を生み出すのは設備・機械と労働なのだなということがわかります。

GDPに含まれないものもある?

 GDPが付加価値の総額だといいましたが、断っておかねばならないのは、市場で取り引きされるモノ・サービスの付加価値の総額だということです。市場で取り引きされないモノ・サービスの付加価値、例えば、家事労働、ボランティア、サービス残業*、公害・自然環境の破壊などはGDPには勘定されません。

2 GDPの3つの顔

GDPの3つの顔*のイメージ

(イラストあり)

所得面から見ると?

 会社、官庁、学校などで働いている人は個人給与所得を、商店、医院などを経営している人は個人事業主所得を得ています。資産家は、家賃やビルなどの賃貸料、株の配当金、預金などの利子配当所得を受け取ります。会社は、社員の給与や銀行からの借金の返済や利息を支払った後に残る法人所得。このような所得をすべて足し合わせたものを「国内総所得」といいます。

支出面から見ると?

 個人が受け取った所得のうち、およそ80%程度は消費されます。これを個人消費支出といいます。土地を買って家を建てたり、マンションや住宅を買ったりすることを個人住宅投資といいます。企業は税引後の法人所得を利回りのいい資産運用に割り当てたり、銀行や株式市場から調達した資金と合わせて設備投資したりします。売れ残った製品や部品のことを在庫投資といいます。政府は、所得税や消費税などの税収を、公務員の給与や、さまざまな公共施設の維持・建設などに使います。そして、輸出額から輸入額を差し引いた純輸出。以上をすべて足し合わせたものを「国内総支出」といいます。

(参考)

GNP

 国民総生産のこと。国民単位での付加価値の生産を見るもので、現在は経済のグローバル化が進んだため、国単位のGDP(国内総生産)が使われます。

(参考)

グリーンGDP

生産活動が環境に与えた影響(大気汚染、水質汚濁、天然資源の減少など)を考慮したGDPにしようという試みです。

*サービス残業

 賃金が支払われない残業のこと。企業が人件費削減のため、実際の残業時間に応じた賃金(超過勤務手当)を従業員に支払っていないこと

*GDPの3つの顔

 経済学ではGDPの「三面等価」と呼んでいます。

名目GDPと実質GDP

 GDPの単位は円ですから、同じだけの付加価値を生み出していても、物価の変動に応じて上下します。年収が去年に比べて10%増えても、物価が15%上がれば、暮らしはかえって苦しくなります。同じように、たとえGDPが大きくなっても、物価がそれ以上の割合で上がっていれば、経済は成長したことになりません。逆に、年収が変わらなくても、物価が下がっていれば、生活は楽になります。物価の変動を無視して計算された付加価値の総和のことを名目(見かけ上の)GDPといい、物価の上昇または下落を反映させたGDPのことを実質GDPといいます。

3 日本の経済成長の軌跡

クイズ2

経済がマイナス成長になることもある? ウソ?ホント?

解説

 君たちの体重が増えたり減ったりするように、国の経済も成長する(太る!)こともあれば、縮小する(やせる!)こともあります。マイナス成長というのは、「実質経済成長率」がマイナスになる」ということです。1973年のオイルショック*の翌年、日本は、戦後はじめてのマイナス成長を経験しました。1990年代にもあわせて3年もマイナス成長を経験しています。

クイズ3

日本の「高度経済成長期と呼ばれた時期のことを示すものはどれ?

@ 東京オリンピックの開催

A 東海道新幹線の開通

B カラーテレビ、クルマ(カー)、クーラーの普及

C 地価や株価が高騰しバブル景気に沸いた

解説

 1958年から1973年のオイルショックまでの15年間を「高度経済成長期」といいます。この間、平均年率9.4%という高い経済成長率を記録しました。高度経済成長期に起きた出来事として、次のようなものがあります。

1958年 東京タワー完成、団地の造成、一万円札の発行

1960年 三種の神器*(=テレビ、冷蔵庫、洗濯機)の普及

      所得税倍増計画(池田隼人内閣の金看板)、集団就職列車

1964年 東京オリンピックの開催、東海道新幹線と名神高速道路の開通

1965年 3C(=カラーテレビ、カー(自動車)、クーラーの普及

1970年 大阪で万国博覧会の開催

答え(模範解答)

●クイズ 1……ホント

●クイズ 3……@ABが正解 Cのバブル景気は1987年から1990年までに起きたことです。

 1973年10月、オイルショックが起きました。イスラエルとパレスチナとの戦争が始まったため、パレスチナに味方する中東の産油国が、イスラエルを支援するアメリカとオランダ(ヨーロッパへの石油輸入の窓口)への禁輸を宣言し、その後2ヶ月のあいだに原油価格は4倍高にまでなりました。

 石油の99%を輸入に頼る日本の経済は大打撃を被るであろう、とだれもが思いました。実際、オイルショックの翌年の74年には、実質経済成長率が−0.5%という、戦後はじめてのマイナス成長を経験しました。また、石油価格が4倍高になったことは、あらゆる物価を上昇させ、消費者物価指数*はたった1年で23.2%も上昇しました。しかし、日本経済の底力はたいしたもので、75年以降は4%台の成長率を取り戻しました。

4 経済成長の光と影―「豊かさ」とは何か?

 経済が成長することによって、その国に住む人々の生活を「豊か」にするわけでは必ずしもありません。一方に、経済成長の恩恵を被る人がおれば、他方には、ほとんど恩恵を被らない人もいます。また、工業化がすすめば、工場からの排煙や車の排気ガスで大気が汚染されたり、工場からの廃液で河川の水質が汚濁されたりすることもあります。こうした公害問題*がクローズアップされたのは、高度成長期も終わりにさしかかった、1960年代末になってからのことでした。

 1980年代後半以降は、日本のGDPは世界の上位を占めるようになっています。しかし、日本での暮らしと、GDPでは日本より下位にある国々での暮らしとを比較して、日本での暮らしの方が豊かだとは必ずしも言い切れません。「豊かさ」を測るモノサシとしては、GDPだけでは不十分なようです。

 経済が成長する(人々の生活が豊かになる)という現象を、もっと多面的なモノサシで測ることが必要なのではないでしょうか。

考えてみよう2

 GDPのほかに経済や生活の豊かさを測るモノサシとして、どのようなものが考えられるでしょうか。

▼下のアドバイスも参考にね!

考えてみよう2……アドバイス

モノサシとしては、労働時間の長短や余暇の過ごし方(家族と過ごす時間、レジャーや芸術文化活動、ボランティア活動など)などが考えられますね。他にもないか考えてください。

*オイルショック

 「石油危機」とも呼ばれ、1970年代に二度あった、原油価格の高騰による経済混乱のことを指します。

*三種の神器

 本来は皇位継承の証とする「鏡」「剣(つるぎ)」「勾玉(まがたま)」のことですが、必要な3つのモノの代名詞として俗に使われるようになりました。

*消費者物価指数

 総務省が毎月発表する統計で、家計が消費する500品目以上の価格を集計して算出しています。クリーニング代やタクシー代といったサービスの料金も含まれています。

*公害問題

 水俣病(熊本)、イタイイタイ病(富山)、四日市ぜんそく(三重)、第二水俣病(新潟)といった公害事件が発生しました。

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