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目次

考えようくらし 調べよう経済

中学生のためのなるほど経済入門

はじめに

第1章シジョウとイチバ

価格

流通

第2章働くことと雇うこと

雇用

失業

起業

第3章お金を貸すこと借りること

銀行

保険

株式

第4章政府のしごと

財政

税金

社会保障

規制緩和

第5章世界にひろがる経済

貿易と為替

グローバル化

第6章豊かさとは何か

経済成長

景気

環境問題

第5章 世界にひろがる経済

1 貿易と為替

世界とつながる君たちの生活

 君たちの身の回りには外国製品がいっぱいあります。食料にも、衣服にも、家電製品にも、外国からの輸入品がとても多いのです。日本から外国へ、自動車やエレクトロニクス製品などを大量に売っています。このように外国とモノ(財)を取引することを貿易といいます。言い換えれば、貿易とは、国どうしの商いのことを意味し、外国からモノを買うことを輸入といい、外国にモノを売ることを輸出といいます。最近は、モノだけではなく、サービスやソフトウェアの貿易が増えています。君たちが外国旅行をして、ホテルに宿泊したり、観光バスや船に乗ったりすれば、また、日本の会社が外国の弁護士や会計士に相談すれば、サービスを輸入したことになります。

1 もしも貿易がなかったら

クイズ1

 もしも貿易がなかったら、いまの生活はどんなふうになってしまうのか。君たちの朝食から考えてみよう。次のイラストは、隆くんと里香さんが食べた朝食です。そのなかで、輸入率が50%を超えているものを選び出してみよう。そこからどんなことが分かるか、書いてみよう。

(イラストあり)

解説

 わが国の食料自給率は約40%(カロリーベース*)で先進国のなかでも、だんぜん低いほうです。それは日本の経済が、国内で食料を作るより、工業製品をつくって輸出して、その代金で食料を輸入するほうが得だからです。だから、もし何らかの理由で貿易が止まってしまったら、大切な食料が足りなくなります。そういう事態にそなえて、食料を自給するべきだという意見もありますが、そのためには、多くの資源(おカネと労働力)を工業から農業に移動させなければなりません。また、日本の国土の大半を農地にしたとしても、1億2,600万人を食べさせることができるかどうか疑問ですよね。

クイズ2

 もし日本が貿易をやらない食料自給国だったら、何人の国民を養えるのだろうか?

(ヒント:江戸時代末期の人口を考えよう)

@ 約1,000万人  A 約3,000万人  B 約5,000万人  C 約1億人

答え(模範解答)

●クイズ 1……パン、ジュース、コーヒー、ドレッシング、豆腐、みそ、サケ、しょうゆ、納豆

●クイズ 2……A

解説

 人口推計によると、1872(明治5)年の日本の総人口は3,480万人でした。この数字から、江戸時代末期には3,300万人程度の人がこの国に住んでいたと推定されます。この数字は、日本が近代の貿易*をおこなう前の数字です。少子化が問題とされる今日でも、1億2,600万人もの人がこの国で住んでいます。ということは、この国の養える人口が、江戸末期とくらべれば、4倍近くにまで増えたということになります。国内では工業製品を作り、食料の半分以上を外国から輸入するという経済の仕組み、すなわち貿易のおかげで、私たちの暮らしは豊かになったのです。

2 日本はどんなモノを輸入し、輸出しているのだろうか

 日本は、国土の狭い資源に恵まれない国です。原油のように、その99%を輸入に頼らなければならないモノも少なくありません。しかし、パンの原料である小麦のように、国内でも作れるのに、輸入しているモノもまた少なくありません。

 その理由を考えてみましょう。

考えてみよう1

 解説にもくわしくのっていますので、よく読んで参考にしてください。クイズ 1 次のグラフは日本の輸入品と輸出品の中身を1970年と2000年で比較したものです。ここから何が発見できるか、できるだけあげてみよう。

(グラフあり)

解説

 1960年代までは、日本は原料を輸入して繊維品を輸出する国でした。ところが最近では、食料や原油などを輸入に頼るのは相変わらずですが、製品を輸入して、機械機器を輸出する国になっています。どうしてそのような変化が起きたのでしょうか。

 それは、日本が作る得意なモノが変わったからなのです。つまり、かつては、軽工業品が得意だったのが、次第に、製鉄、造船、化学繊維などの重化学工業が得意になり、今は、自動車などの機械製品や電気機器とくに情報機器などのハイテク製造業を得意とする国になったのです。

 二つの国があり、生活に必要なモノが二つしかないとしましょう。それぞれの国が得意なモノを作る*ことに特化し(労働力を集中させ)、製品を他国に輸出し、もう一つのモノを他国から輸入すれば、どちらの国も豊かになるということが分かっています。実際、日本は、何もかもを国内で作って、自給自足するのではなく、得意なモノの生産に資源(おカネと労働力)を集中させ、貿易することにより「豊か」になってきたのです。国内で作るよりも外国から輸入するほうが安上がりな小麦を輸入して、工業製品の生産に資源を投入するのが得策だったからです。

*近代の貿易

 江戸時代は鎖国したと言われていますが、長崎ではオランダ、中国との貿易が幕府の管理のもとでおこなわれていました。それが打ち破られ、原則としてだれでも貿易ができる近代の貿易は幕末の1859年から始まりました。

*得意なモノを作る

 イギリスの経済学者リカードという人が、この理論を主張しました。

3 貿易をするとみんなが「幸せ」になるか

 貿易のおかげで、国は豊かになるし、君たちの生活は便利になります。でも、すべての国々や人々を貿易が「幸せ」にするわけではありません。

考えてみよう2

 もし安い外国産の製品が入ってきたら、同じ製品を国内で作っている人々はどう考えるでしょうか? また、消費者はどう考えるでしょうか?

・生産者は………

・消費者は………

 貿易をめぐる紛争*は次の年表で確認しておいてください。いずれも安い製品が入ってきた生産者が政治の力を借りて問題を解決しようとしたところに紛争が発生しています。紛争の解決は二国間でもおこなわれますが、世界貿易機関(WTO*)に提訴してルールにのっとって解決することもおこなわれています。

◆ 調べてみよう 1◆

 最近20年間くらいの間で、日本の製品の輸出や日本への外国製品の輸入を巡っておこった紛争*を調べてみよう。

貿易摩擦の年表

(表あり)

4 忘れてはいけない為替レート

 国によって通貨が違うのに、貿易の代金をどのようにしてやり取りしているのでしょうか。ここに登場するのが外国為替というものです。

◆ 調べてみよう 2◆

▼下のアドバイスも参考にね!

あなたは、アメリカから100ドルのパソコンを、フランスから100ユーロの香水をそれぞれ直接輸入しました。さて、代金を円でいくら支払えばよいでしょうか。新聞やインターネットで今日の為替レートを調べて計算してみよう。(手数料は考えないで計算してください。また、銭の部分は四捨五入で切り捨ててください)

〔アメリカ〕

〔フランス〕

答え(模範解答)……アドバイス

 為替レートは日々変わっていますので注意して調べてください。

解説

 世界の国々で使われている通貨どうしの交換レートのことを為替レートといいます。貿易をスムーズに行うためには、為替レートは固定*していたほうが、わかりやすくて便利なのですが、1973年から、先進諸国の通貨の需要と供給が等しくなるように、為替レートの決定を為替市場にまかせる変動相場制になりました。固定相場制のもとでの円・ドル交換レートは1ドル=360円でした。1970年ごろになると、日米の貿易不均衡*がとても大きくなりました。その理由のひとつは、1ドル=360円という為替レートが円を過小に評価(実力以上に安く評価)していたことにあったのです。多国間の貿易不均衡を解消することが、変動相場制への移行のねらいだったのです。

5 円高・円安どちらがお得?

 変動相場制のもとでは、為替レートは、貿易額をはじめとして、外国からの資金の流入・流出額、その国の将来の予測など様々な要因で変動します。ここでは、貿易にしぼって円高・円安の経済や生活への影響を考えてみます。

考えてみよう3

 あなたは日本のパソコンメーカーの社長さんです。1ドル100円だった為替レートが1ドル80円になってしまいました(円高ドル安*)。このとき、1台10万円の製品を輸出する際に、これまでは何ドル、円高になってからは何ドルの値札をつけると利益が同じになるのでしょうか。

 1ドル100円のとき………10万円÷100円/ドル=

 1ドル80円のとき…………10万円÷80円/ドル=     

 したがって、     ドル値上げをしなければなりません。

考えてみよう4

 輸出産業(自動車、電機、鉄鋼、化学など)にとって、円高はいやなことなのです。逆に、原材料を輸入している電力会社やガス会社にとって円高はありがたいことなのです。その理由を考えてください。

輸出産業は………

輸入産業は………

考えてみよう5

 海外に旅行する日本人にとって、円高は有利ですか不利ですか。日本に旅行する外国人にとってはどうですか。同じくその理由も考えてください。

・海外へ旅行する日本人は………

・日本に旅行する外国人は………

 このように、円高であれ円安であれ、すべての日本に住む人々や会社にとって有利なわけでも不利なわけでもありません。

考えてみよう3(上から順に)1,000  1,250  250

*貿易を巡る紛争

 自動車とか牛肉とか、個々の商品の輸出入に関して起こる紛争を貿易摩擦といいます。取引のやり方とか、その国の経済のあり方まで問題になる場合は、経済摩擦といいます。

*WTO

 1995年に「関税と貿易に関する一般協定(GATT)」を発展させて作られた国際組織のことです。国連の関連機関のひとつで、ジュネーブに本部があります。

*レートは固定  1949年から1971年まで、日本では1ドル=360円の固定レートでした。

*日米の貿易不均衡

 日本のアメリカへの輸出からアメリカの日本への輸出を引いた額がとても大きくなることです。

*円高ドル安

 円の数字が小さくなっているのに円高というのは、ドルを中心に表示されているからです。逆に円を中心に表示すれば100円=1ドルだったのが、100円=1.25ドルになります。つまり,100円持っていると,1ドル分の買い物ができたのが,今度は1.25ドル分の買い物ができるようになるわけです。

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