第3章 お金を貸すこと借りること
3 株式
株式のしくみを知ろう
1 株式の仲介をするところが証券会社です
解説
証券会社の仕事は、お客さんからの注文を受けて、株式市場*で株式(株券)を売ったり、買ったりすることです。証券会社を通して出されたお客さんからの注文は、証券取引所につながれます。
投資家(株主*)が、ある会社の株を買う(投資)ためには、売りたい人がいないといけません。売り注文と買い注文とを仲介する場所のことを証券取引所といいます。
証券取引所はどこにあるの?
東京・大阪・名古屋・福岡・札幌の5ヶ所にあります。
(写真)
▲東証のマーケットセンター(写真提供:東京証券取引所)
2 「貯蓄」と「投資」の違いは「貯める」と「投げる」の違い
株式を買う(投資をする)と、株価(値段)が下がり、最初に出した自分のお金が戻ってこないこともあります。その反面、株価が上がり大もうけをすることもあります。株を買うということは、その株式会社に出資(お金を出す)することであり、その会社を応援することなのです。
3 そもそも株式って何?
君たちのおとうさんやおかあさんたちは、毎朝、新聞を見ながら「株が上がったぞ」とニコニコしたり、「株が下がったよ」とがっかりしたりしていませんか。思い当たるとすれば、きっとどこかの会社の株主にちがいありません。
株とは「株式」のことです。株式とは、会社(企業)が必要なお金を集めるために、会社がお金と引き換えに発行する「証券」のことです。株式をもっている人のことを株主といい、株主は、毎年、一株につきいくらかの配当金を受け取ります。株式が証券取引市場に上場されれば、株式の売り手と買い手の言い値が調整される結果、毎日の株価が決まります。株価は、毎日、変動*します。おとうさんやおかあさんのもっている株式の株価が上がれば、おとうさんは喜び、下がれば、がっかりするのです。だって自分のもっている株式という資産の価値が上がったり下がったりするのですから。
4 株式会社のはじまり
1602年にオランダ商人がバタビアとの貿易のために設立した東インド会社が、歴史上、はじめての株式会社なのです。
5 株式会社のしくみ
世界ではじめてつくられた「東インド株式会社」
コショウ貿易のために必要な一万ポンドを調達するために、東インド会社は、一ポンドの株券を一万枚発行します。お金持ちたちが、それぞれ何株かずつ買います。こうして集めた一万ポンドで、会社はコショウをはこぶ船を買ったり、船員を雇ったりします。そしてアフリカの南端をぐるりとまわって、インドに向けて航海にでます。無事、コショウを積み終えた船がロンドンに帰ってくれば、肉の薬味として欠かせないコショウを売って大もうけします。もうけたお金は、株券を買ってくれた人(株主)に分配(配当)されます。
「配当がもらえる」という期待があるからこそ、大金をだして東インド会社の株主になるのです。ただ、遠洋航海には危険(リスク)がつきものです。海賊に襲われることもあるし、嵐のために船が難破することもあります。だから、株主は、出したお金が戻らない可能性もあるというリスクを引き受けなければなりません。リスクを覚悟のうえで株主になるのですから。
理解度テスト
株式の特徴についてまとめたものです。下から適当な語句を選んでカッコの中をうめてください。
@ 株式会社は、一人ひとりから集めるのは( )お金でも、全部あわせると( )お金を大勢から集めることができる。
A 会社が倒産しても、( )は出資したお金以上の責任は負わなくていい。
B 株主は( )に株を売ったり買ったりできる。
〔 自由 特定の相手 大きな 社長 少ない 株主 〕
答え(模範解答)
理解度テスト……(順に)少ない 大きな 株主 自由
*株式市場
投資家(株主)が、ある会社の株式を買う(投資)には、売りたい人がいないといけません。売り注文と買い注文を仲介する場所のことを証券取引所といい、株式の売り手と買い手が証券会社を通じて取引する場を「株式市場」といい、英語ではストックマーケットといいます。
*株主
株式会社の株式を所有している個人や企業のことをいいます。株主は、個人、会社、金融
機関など様々です。外国人や外国の企業が日本の株式会社の株を持つことも珍しいことではありません。
*トピックス
東京証券取引所の一部に上場されているすべての株式の総額を基準値で割った指数のこと(TOPIX)。
*変動
A社の株の供給が需要を上回ればA社の株価は下がり、下回れば株価は上がります。こうして株価は週日に開かれる株式市場で、それぞれの会社の株式の需要と供給が均衡するように変動するのです。
6 君も投資家(株主)
(1)まず、上場*している会社で、どの株式を買うのか決めよう。
(2)目的の会社が決まったら、新聞やインターネットの株式欄を見よう。
(3)予算と相談して投資額を決めよう。(株式を買うときはどういう単位でかうのかな?)
(4)持ち株の値をチェックしよう。毎日(日曜日と月曜日以外)、新聞の株式欄や証券会社の店頭やウインドに株式の値段が公表されるよ。
(5)株主総会に出席してみたくない?
(6)1 年後の収益を予想しよう。
7 株主総会
解説
ちょっと難しい解説
株主は会社の経営に対して意見を言うことができる
株主は、会社の最高意思決定機関である株主総会に出席することができます。ここでは会社の社長・役員を決めたり、会社の経営方針はこれでいいのか、そして会社に投資した資金(株の購入)の運用状態などをチェックします。投資した会社が自分の投資資金を有効に活用して稼いでくれているのか、など一年に一回の株主総会は、自分の投資資金のとても良いチェックの機会になります。
株主総会とは、毎年1回会社の決算(1年間の会社の営業活動のまとめ)が終わった後開かれる定時株主総会と、合併・統合*など重大な決定事項の発生する際に臨時に開かれる臨時株主総会があります。日本の会社では、決算の多くは3月(会社の1年間の営業活動は4月に始まり3月に終了)に集中していますから、6月下旬から多くの定時株主総会が開催されます。
株主の意見の反映は参加した一人につき一票ということではなく一株あたり一票の議決権がありますから、多数の株式を持つ大株主がその会社の運営に大きな影響を持つことになります。
*上場
株式会社は、自社の株式を誰でも売り買いできるようにしようとするには、証券取引所に上場しなければなりません。設備投資などのために会社が資金を必要とするとき、新たに株式を発行して資金を入手するためには、上場していなければなりません。
*合併・統合
複数個の会社のうち一社が存続会社となり、他の会社は存続会社に吸収されて解散するのが合併です。経営統合とは、複数個の会社の株式を保有する「持ち株会社」をつくり、経営の効率化をはかることをいいます。