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目次

考えようくらし 調べよう経済

中学生のためのなるほど経済入門

はじめに

第1章シジョウとイチバ

価格

流通

第2章働くことと雇うこと

雇用

失業

起業

第3章お金を貸すこと借りること

銀行

保険

株式

第4章政府のしごと

財政

税金

社会保障

規制緩和

第5章世界にひろがる経済

貿易と為替

グローバル化

第6章豊かさとは何か

経済成長

景気

環境問題

第4章 政府のしごと

4 規制緩和

政府はどこまで仕事をするの?

 もし、あなたたちが病気になったとき、24時間営業のコンビニエンスストアで薬を売ってくれたら便利だと思いませんか? 昨年から一部の薬でそれができるようになりました。今までなぜそれができなかったのでしょうか。そこには国民の安全を守るために、政府による規制がどこまで必要かという問題に関しての熱い議論があったのです。今回は、政府の役割について経済面から考えてみることにします。

1 なぜ規制が必要なの?

クイズ1

 規制緩和によってコンビニエンスストアで買えるようになった薬はどんなものでしょうか?次のなかで買えるものに〇をつけてみよう。

風邪薬  ビタミン剤  消化薬  目薬  うがい薬  解熱剤

酔い止め薬 整腸剤  コンタクトレンズ装着薬 

 2004年から、消化薬や整腸剤、うがい薬などいままでは薬局でしか売ることのできなかった薬371品目*が、コンビニエンスストアなど一般の商店でも売ることができるようになりました。それでも、風邪薬や解熱剤などは、副作用の心配もあり、薬剤師がいる薬局でしか売ることはできません。

 なぜ、このような規制があり、それが緩和されてきたのでしょうか。それは、政府には国民の健康を守るという公共的な仕事を行う必要があるということを、みんなが認めてきたからなんです。つまり、もし薬を全く何の規制もなく、自由に作って販売しても良いということになると、場合によっては副作用など国民に重大な被害がでる事態になってしまうことが予想されます。そうならないために、政府は、あらかじめ法律*を作り、国民の健康を守るための仕事をするという合意ができていました。

答え(模範解答)

●クイズ 1……ビタミン剤、消化薬、うがい薬、整腸剤、コンタクトレンズ装着薬

考えてみよう1

 でも、社会が変化し、生活の様子が変わってくると、このような政府の役割について疑問が出てきました。

 つまり、政府が国民の健康をまもるためにあらかじめいろいろ規制をするよりも、国民が自由に選択できるようにしたほうが、便利だし、もっと豊かな生活ができるのではという意見が出てきたのです。薬の例でいえば、政府によって安心を得るか、自分の責任で便利をとるかという議論が出てきたのです。

 さて、あなたは、風邪などの症状があって薬を飲まなければならないときに、やはりお医者さんや薬剤師の指導の上で安心して飲んだ方がいいか、それとも軽い薬なら自分で選んで買えるほうがいいか、考えてみてください。

▼下のアドバイスも参考にね!

@(   ) 安心を選ぶ:理由

A(   ) 自分で選ぶ:理由

B(   ) わからない:理由

2 政府はどこまで仕事をすべきなんだろう?

フォトランゲージ

 この写真のビル街ではどんな仕事をやっているのだろう?

(写真あり)

 これは東京都心を霞が関を中心に空から見た写真です。霞が関には、薬に関する仕事を担当する厚生労働省など、現在では1府12省庁*があるところです。これらの府省庁は、経済の立場からいうと、中央政府という経済主体をになう具体的な機関になります。これらの省庁では、国民の代表が国会で決めた法律に基づいて、様々な仕事を行っています。それを行政といいます。すでに学んだように、行政のなかで特に経済に関する仕事を財政といいます。

●考えてみよう1……アドバイス

それぞれ自分の考えと理由を入れましょう。例えば、安心を選ぶに〇をつけた人の理由は「やはり副作用は怖いから、がまんしても翌日病院に行く」などが考えられますね。  フォトランゲージ……官庁が入っているビルの写真

*371品目

 それまでの医薬品から人体に対する影響が少ない医薬部外品という区分になりました。ビタミン剤、消化薬、うがい薬、整腸剤、コンタクトレンズ装着薬はその対象になりコンビニで買うことができます。

*法律

 薬や薬局に関する法律は薬事法といいます。薬事法だけでは十分でない部分に関しては、薬事法施行令、薬事法施行規則、薬局等構造設備規則などで規制がされています。薬局には必ず薬剤師を置かなければいけないなどはその例です。

*1府12省庁

 内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛庁、国家公安委員会の1府12省庁です。

クイズ2

 現在、規制緩和をして政府の仕事をもっと少なくして、民間の自由にまかせたり、国民の選択に任せたりした方が経済的にも良いのではないかということで議論になっている分野がいくつかあります。その対象となっている次の仕事*は政府のどの省庁が管轄している仕事でしょうか。省名を調べて書きましょう。

A(    )義務教育の学校でも株式会社が運営してもいいではないか。

B(  と  )幼稚園と保育園を一体のものとして運営してもいいではないか。

C(    )高層住宅の建築規制をもっとゆるくして自由につくらせてもいいのではないか。

D(    )職業紹介を民間にも開放したらいいのではないか。

ヒント:厚生労働省 文部科学省 国土交通省

答え(模範解答)

●クイズ 2……A 文部科学省  B 文部科学省と厚生労働省  C 国土交通省  D 厚生労働省

●考えてみよう2……コンビニエンスストアに設置されたATM(現金自動支払い機)

3 政府は民間に介入しない?

このイラストにはどんな意味がある?

(イラスト&写真あり)

 君たちの身近なコンビニエンスストアのなかのこの風景。こんな風景も最近のことです。銀行業務は預金者の保護もあり、旧大蔵省の監督下にありました。しかし、1990年代の後半からはじまった金融ビッグバン政策*のなかで、いろいろな業種から銀行に参加が始まりました。また、営業の形態も多様化して、いまではインターネットを使う銀行もできています。

 政府の方も、大蔵省が財務省になり、銀行を指導していた部署は2001年には金融庁としてまとめられました。規制緩和とともに政府の改革も進んでいるわけです。

4 同じことが経済全体でおこると?

スミス君とケインズ君の意見

 このような規制緩和には2つの意見があります。

 スミス君は、「民間でできるものは民間でやればいいので、もう政府がいろいろ頑張って仕事をする必要はないし、規制も緩めた方がビジネスチャンスは大きくなるし、みんなの利益が向上するよ」と主張しています。

 ケインズ君は、「やっぱり経済運営の基盤となるような設備や制度など国民生活にどうしても必要なものは、政府が税金を使ってでも整備して運営する必要があるし、規制がすべて悪いわけではなく、問題は無駄なく効率的にやることじゃないか」と主張しています。

考えてみよう3

 スミス君の主張をもっと拡大するとどんなことが起こるか、考えてみてください。

解説

 世界では、こんな考えを主張する人もいます。

 極端な意見では、大部分の政府のしごとを民営化すること、たとえば消防、警察、刑務所など公共サービスを民営化すべきだと主張するひともいます。実際に、アメリカでは刑務所の運営を民間のサービス会社に任せるケースもでています。

 アメリカでは規制緩和が進んで、通信や電力も民間会社が自由に活動できるようになっています。でも、カリフォルニア州で起きた停電事故や、規制緩和でもうけようとして破たんしたエンロン社*のような事件も起きています。どこまで規制を緩和するかは、難しい問題ですね。

小さな政府と大きな政府どちらを選ぶ?

 スミス君の主張のように、政府の仕事をできるだけ小さくして、民間の力を利用して豊かな社会をつくってゆこうとする道と、ケインズ君のように、効率的な仕事をやらなければいけないのはその通りだけれど、社会的に弱い人やみんなが公平に利益をうけるためには、やはり政府の力は必要とする考えもあります。

 さて、ここではクラスでディベート*をやってみてください。

 テーマは「規制緩和をもっと進めるべきである」…賛成か、反対かです。

▼下のアドバイスも参考にね!

*賛成論

*反対論

 ディベートを聞いてのあなたの考え

●ディベート……アドバイス

賛成論では、規制緩和を進めることで、もっと自由に商売ができるようになり、チャンスが増える。最初に頑張って豊かになった人が、それを社会全体に還元すればよいのであって、その頑張りのチャンスを与えることが大切などの意見をまとめるとよい。反対論では、規制緩和で国民の安全に不安が生じたり、貧富の差が開いたりして社会全体が不安定になるなどの意見をまとめるとよい。

*仕事

 これらの問題は、内閣が作った「総合規制緩和改革会議」が提起した12の項目から選んでいます。

*金融ビッグバン政策

 日本版金融ビッグバンともいわれます。フリー・フェア・グローバルを原則として広範な金融面での規制緩和を実施して、日本の金融市場を活性化するための政策です。

*エンロン社

 2001年12月にアメリカの大手エネルギー会社のエンロン社が経営破たんした事件。テキサス州の天然ガスの小さな会社が、規制緩和などで急速に拡大し、カリフォルニア州での電力販売や卸売りの自由化のなかで大もうけしたが、結局不正経理などが発覚して倒産しました。

*ディベート

 ある一つのテーマを巡って、賛成派と反対派にわかれて、議論してどちらに説得力があったかを競うゲーム。立論→質問→二度の反ばく→まとめ、という流れで進めます。

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