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2003・10・11 日本社会科教育学会ウエッブサイトを利用した経済学習の試み−「e-教室」一年の実験から−3 「経済と私」のカリキュラムと学習活動カリキュラムでは,学習指導要領のなかの高等学校公民科「政治・経済」のカリキュラムの内容を基本的な骨組みとすることにした。 ただし学習指導要領では,経済の基本概念に関する学習項目がないので,それをまずとりいれ,ミクロ経済,マクロ経済,国際経済と学んでゆくような構成とし,「今月の問題」という名称で,問題を月1〜2題出題し,生徒との回答を往復する形とした。ほかに,現実の日本経済の動向を自由に討論する「経済いろいろ」,また,体験を通して経済を学ぶ場として「日経ストックリーグ」に参加することとした。その意味では,この教室における活動は,現実の教室での学習活動に似たものをベースとしつつ,そこでは得られない部分をカバーすることを目指してきた。 当初に予定したカリキュラムは以下のとおりである。 ■教室の構造教室は大きく二つのコースに分かれています。 Aコースは,「今週の話題」のページに,原則として毎週出される問題を考え,解答を提出,議論をしながら経済学の基礎を学んでゆきます。 ただし,問題といっても正解がある問題もあれば,みんなで議論しながら自分なりの解答をえてゆくという問題もあります。これを一年間やってゆけば経済学の基礎はマスターできるようになっています。このコースは一応経済学の体系にそくして作られていますが,途中からでも参加できるように配慮するつもりです。また,ここでは先生が生徒に教えるというのではなく,あくまで参加者同士の学びあいの場となるようにしてゆきたいと考えています。 Bコースは,「Bコースの部屋」のページで展開されます。ここでは,「日経ストックリーグ」に参加しながら,その時々に話題になっている問題や,日頃疑問に思っている問題,どうしてもこだわって考えたい問題などを自由に議論する場です。ここでは,先生から出された問題を解くのではなく,参加している人たちから出てきた問題を自由に議論する場とします。 もちろん,Aコースで学んでいる経済学の基礎の内容を使った議論ができれば最高ですが,最初からそんなことは考えずに,とにかく現実の市場の動きや,日本経済や世界の動向などを見ながらみんなで議論することを楽しみましょう。 参加する諸君は,原則として両方のコースに加わってもらいますが,もちろんどちらか一方でもかまいません。でも,両方を一年間やりとげればきっと自信をもって経済を語ることができる人,生活の場面でしっかりした判断ができる人になることでしょう。 ■AコースのカリキュラムAコースは,大きく四つの部に分かれます。 6月から7月までの二ヶ月 経済の基本問題を学びます。ここでは,なぜ経済を学ぶのか,経済を語る上でどうしても必要な考え方や理論はどんなものがあるのかを学びます。 8月から10月までの三ヶ月 市場に関する様々な理論を学びます。Bコースでやっている「ストックリーグ」は株式市場を舞台としたゲームですが,その舞台となる市場にはどんな秘密が隠されているか,その限界はなんだろうかなど多くの考えなければいけない問題があります。それらを一つづつといてゆきましょう。 11月から翌年の1月までの三ヶ月 ここでは一国レベルでどのように経済をうまく運営したらよいかを考えます。景気はなぜ変動するのか,景気を良くするにはどうすればよいのか,財政や金融といった政府や日本銀行の仕事を学び,その成功と失敗を考えます。 2月から4月までの三ヶ月 一国レベルの話からさらにひろく国際経済を学びます。貿易や為替といった今の私たちに身近でありながらなかなか難しそうな問題や先進国と発展途上国の経済格差,地球規模の環境問題などグローバルな問題を考えます。 5月の一月 いままでの総まとめです。ここまでで抜け落ちた問題や,経済を学ぶことで本当に私たちの生活や世界は豊かになるだろうかといった根本問題を考えてみます。 ■BコースのカリキュラムBコースは,基本的にカリキュラムはありません。「日経ストックリーグ」をやってゆくなかで必要な知識や理論,疑問に思ったことを考えたり議論したり,また,それとは関係なく,日頃の疑問や日本経済や世界経済の問題でみんなと考えたいことを自由に議論してゆきます。ここの主役は参加している学生諸君です。 当然のことであるが,上記のカリキュラムをすべて当初の予定通り進行させるわけには行かなかったが,ほぼ一年でおおよその内容を消化することができた。 当初の予想と大きく食い違ったのは,Aコースの「今週の問題」であった。 当初は週単位で問題を出し,やりとりをして,まとめるという予定をたてていたが,問題に対しての回答が簡単には集まらなかったこと,その回答にレスポンスすることが時間的にも,能力的にも数人ではとても対応できなかったことがあり,「今月の問題」というかたちで,一つのテーマに対して約1ヶ月をかけてやり取りをしながら問題を深めることになった。 また,日経ストックリーグの参加に関しては,教室内の生徒に募集をかけ,10人の生徒が応募した。最終的にはレポートにたどり着く生徒が出なかったが,株式のバーチャル売買を通して,なぜ株が下がりつづけているのか,田中耕一さんがノーベル賞を獲得すると島津製作所の株がどうなったのか,自分のこれから興味がある分野にはどのような企業があるのか等々の議論をしながら楽しく学習を続けることができた。 |
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