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004 社会科教育学会自由研究発表

総合学習における企業家教育のすすめ方

東京都立西高等学校 新井 明

 

1 はじめに

企業家教育は,アントレプレナー教育とも称され,近年注目を浴びている学習領域である[1]。この学習は単なる企業の経営者を創るという目的ではなく,新たな時代に問題を自ら発見し,それを解決する指向と技能を持った人間を育成するという,総合学習にふさわしい学習内容を持つ。本報告は,その企業家教育を総合学習で取り組んだ記録と結果から,総合学習のあり方と,企業家教育のすすめ方に関してまとめたものである。

最初に,この報告のスタンスを簡単に述べておきたい。

報告者の関心は二つある。一つは,総合学習のあり方である。総合学習は現行指導要領の目玉として小学校三年生から高等学校まですべての段階で導入された。しかし,その実態に関しては多くの議論と困難が横たわっている。総合学習の実態とあり方に関して,高等学校における取り組みから問題提起したいというのが一つである。それに関しては別の機会で発表をしているので,その時の報告書を機会があれあればお読みいただきたい[2]

もう一つ関心は,経済教育をすすめてきた立場から企業家教育をどのように取り込むことができるかという関心である。報告者はここ10年近く経済は希少性のもとでの選択であり,経済教育は責任ある選択ができる人間を世に送り出すことであると言いつづけて来た。経済教育は,基本的には経済学それも主流派の経済学を下敷きにして構成されている。企業家教育は,経営学の観点が強い。経済教育のなかに経営的観点,さらに企業家教育が持つ総合性をどこまで取り入れることができるのかが,報告者の関心である。

この二つの関心の接点に今回の報告の授業実践が存在するのである。

 

2 企業家教育の実践

 報告者の実践を紹介する前に,近年のわが国で取り組まれてきた企業家教育の概観をまとめておきたい。

 企業家教育の定義,内容に関してはわが国では定着したものがない。それはなにより,企業家教育そのものが導入されてまだ日が新しいことが大きい。その先駆的なものは学校からではなく,学校外から始まっている。

 一つは,経済産業省が学校における企業家教育の推進を提案したことがきっかけととなっている。その提案をうけて,学校における企業家教育プログラム開発の先駆となっているのが,今回の授業でも全面的に協力をうけたアントレプレナーシップ開発センターである[3]。同センターは,1999年に『初等・中等教育段階における起業家精神の涵養教材とその教授法に関する調査』の報告書を刊行し,それに基づいて,1999年に中学生向けの『アントレの木』,2001年には『夢ナビゲーション』を開発している。特に,『アントレの木』の開発に協力した京都教育大学附属中学では,積極的なアントレ教育を目指しており,授業実践面では先駆的な実践が報告されている。

 もう一つ学校外からの働きかけは,早稲田大学の大江建客員教授が主催している「ワセダ・ベンチャーキッズ」がある。これは休日など学校外での起業プログラムである[4]。ほかにもジュニアアチーブメントなどによるプログラムがていきょうされている。

 学校教育関係では,三重大学の山根栄次教授のグループが推進している「会社をつくろう」「起業家に挑戦」などのプログラムである。これは,中学二年生を対象とした総合学習でのプログラムであり,本報告とも重ねる部分が多い[5]

 いずれにせよ,企業家教育の実践ははじまったばかりであり,実践と理論研究を積み重ねがさらに必要な領域である。

 

3 授業実践の概要

報告者の実践は,立教大学のビジネス・クリエーター創出センター(代表,廣江彰教授)の「『ビジネス・クリエーター』創出のための基盤整備と教育プログラム形成に関する研究」のプロジェクトの一環として実施したものである。同プロジェクトでは,5年計画で小学校からビジネススクールまでの一貫したアントレ教育のプログラムつくりを指向しており,報告者の授業は第一年目として,既存のプログラムを土台とした実験授業として位置付けられている。授業に際しては,NPO法人のアントレプレナーシップ開発センターの全面的な支援を受けている。

授業の概要は以下のとおりである[6]

 

特別授業「会社を作ろう」

 

1) 授業担当者:新井 明

2) 対象生徒:東京都立国立高等学校1年生4クラス(1組、2組、3組、7組)

42名×4クラス=168

*この生徒たちは,「現代社会」の授業のなかで『レモンをお金に変える方法』を読み,また,総合的な学習の時間を使って「株式学習ゲーム」に参加するなど,他の子高校生に比べて,経済知識及び経済への関心は多く持っている。また,実施時期12月には経済学習をほぼ終え,経済の基本概念や市場メカニズム,マクロ経済の概略はすでに学習済みである。

3) 実施時期:平成1512月月末〜平成163月末   

4) 授業時間:14時間+課外学習

5) テーマ :『めざせ企業家‐君はレモネード屋を越えることができるか‐』

6) 使用教材:経済産業省「平成11年度起業家精神涵養教材等開発普及事業」にて開発されたCD-ROMベースの教材「アントレの木」

*本教材は、CD-ROM、指導マニュアル、生徒用ワークブックのセットになっており、生徒用のワークブックは、CD-ROMに入っている3つのセクションのうち、ワークシート部分を使った「集まれ起業家の卵!」だけを紙ベースで印刷したものである)

7) 授業の目的

@     いままでの経済分野学習をふまえ、創造的かつ社会に貢献できる製品やサービスを提供できる継続的な組織(企業)を創る。

A     単なる思いつきでなく、実際に社会的評価に耐えられるようなアイデアを,製品やサービスという形にする体験をする。

B     環境や福祉という現代の社会が直面する問題をいかに解いてゆくのか、その意欲や方法を発見する場とする。

8)授業の流れと実際

 日時,学習テーマ,学習内容,生徒の反応を時間ごとに表にしてある。

 

 

日時

学習テーマ

学習内容・生徒の反応

12月中旬

準備学習

 

ねらい

今回の学習の目的や活動内容を理解させる

<学習内容>

・企業の立ち上げ(グループ6人×7社の設立)

・テキスト「アントレの木」の生徒用ワークブックの配布

・授業のねらいと、取り組むテーマ(「環境」「福祉」の確認

<授業者の感想>

2学期に実施した「ディベート」や「株式学習ゲーム」でグループ学習に慣れていたが、機械的にグループ編成したため、グループにより温度差が見られた。本格的授業は1月からとなるため,本時はまさに準備の時間と言える。

1回目

 

問題解決

 

ねらい

テーマ(環境、福祉)分野に関わる問題認識と問題解決につながる企業活動についての理解

 

 

 

 

使用教材:

・「現代社会」の教科書

・クイズ形式のプリント

 

 

 

<学習内容>

・「現代社会」の教科書のなかの「現代に生きる私達の課題」の箇所を使い、環境や福祉分野ではどのような問題があるかを認識させる。

     身近な事例をあげ、クイズ形式で課題を認識させる

環境:国立高校で取り組んでいるゴミ減量と資源有効活用

福祉:障害を持っている人の生活、介護の問題など

・既存の問題解決に取り組んでいる企業の事例として、第4回目の授業に招待する会社の取り組みを紹介

<授業者の感想>

インターネットで情報収集したり、グループで話し合ったりしながら、学習分野のクイズの回答を考え、発表、確認という作業のなかで、比較的熱心に取り組んでいたが、時間の制限もあり、深く課題認識するところまでいかなかったと思われる。

2回目

 

便利な商品とは?

 

ねらい

問題解決をして、それを商品やビジネスにした事例から学ぶ

 

使用教材:

     「アントレの木」生徒用ワークブック

 

 

<学習内容>

     前回の学習の復習と本日の課題の確認

     生徒用ワークブックの単元2「この問題解決できるかな」のレッツチャレンジ4「君ならどうする?」で、環境・福祉関係の問題解決にグループで取り組む。

     話し合いから出てきたアイデアをグループごとに発表。

     次回の授業の確認

<課題>

生徒用ワークブックの単元1「アイデアが一杯」のレッツチャレンジ2「なぜ利用しますか?パート」で、家族や友人が使っている便利商品についてヒアリングしてくる

<授業者の感想>

話し合い、発表、内容へのコメントをし、まとめるという学習活動を日頃それほどおこなっていたわけでなかったので、一時間があっという間に過ぎてしまう。時間配分に要注意。生徒は,自分の問題としてだんだん問題をとらえるようになってきたようだ。

やっと生徒に少し火がついたという感じである。

3回目

 

もし企業を起こすなら

 

ねらい

アイデアを形にして企業を起こすときに必要な最小限の心構え、知識の確認

 

使用教材:

     プリント教材

参考教材:

『13歳のためのハローワーク』(村上龍)

      

 

 

<学習内容>

     良い学校、良い会社、良い人生というものについて考える。

     職業の選択肢のなかに自分で会社を起こすことを知る。

     起業のために株式会社を設立する際に必要な法的条件を知る。

     企業経営に不可欠な人・物・金の3条件について理解し、特にお金の管理・運用・利益の一連のプロセスを2学期に学習した「レモネード屋さん」の事例を使って理解する。

<課題>

生徒用ワークブックの単元2「この問題解決できるかな?」のレッツチャレンジ5「身の回りの起業家」、単元3「やりたいことを仕事にした人達」のレッツチャレンジ6「起業家って誰?」をやり、起業家とはどういう人のことを言うのか学習しておく。

<授業者の感想>

講義形式の授業であったため、学習への興味が低い生徒もいた。話題の本である『13歳のためのハローワーク』にも、それほど強い反応を示さない生徒も多かった。

しかし,後の授業評価をみると,きちんと企業の法的側面や資金問題などを説明したことがのちの学習の支えになったとする生徒もいて,何に焦点をあてて伝えるかということと、資料提示の仕方への工夫がさえあれば必要な時間である。

その意味で,ここでの企業経営の知識の紹介をどのレベルまで行うかは経営教育の観点をいかに普通課の授業に導入するかの問題意識から言っても,大きな課題となろう。

4回目

 

起業家から話を聞く

 

ねらい

取り組む課題で実際にビジネスをしている起業家の話を聞くことで、学習意欲を高め、起業のおもしろさや、大変さを知る

 

<学習内容>

環境チーム:実際に環境の分野(産業廃棄物処理)でビジネスを立ち上げ、起業家として活躍している、株式会社ハチオウの森社長から話を聞く。

産業廃棄物のビジネスの成り立ち、法律との関係、人材の確保や収益性の問題、ネットワークの大切さ、大企業の取り組み等について学ぶ。

福祉チーム:予定していた福祉分野の起業家の方が、突然都合がつかなくなったので、立教大学の廣江先生の講義を聞く。

3組:高齢化社会、高齢化社会のなかで生まれるビジネス・無くなるビジネス、福祉ビジネスとは何かについて考えた。

7組:アップルの創業者を紹介し、起業家とはどのような人か考え、また、セブンイレブンのビジネスの工夫点を考えた。

両クラスとも、講義のあと、予定していた起業家の会社をインターネットで検索して、そのビジネスから、企業運営の大変さについて考えた。

<授業者の感想>

生徒は、講演する予定だったが来校頂けなかった会社の事情などから、ビジネスの厳しさを感じたようだ。また,環境ビジネスでは,社会的に認知されていない分野を長年かけて育て上げた事例を通してビジネスの可能性を感じたように思う。また,廣江先生の授業は,生徒を思考に巻き込んでゆく大学の先進的な授業スタイルを通して,問題発見とそれを探究することのおもしろさが分かるとともに,講義中心の高校の授業の相違が明確になり生徒にとっては刺激的な時間になったようだ。

5回目

6回目

ビジネスプラン

 

ねらい

アイデアを商品化するプロセスを学び、実際のビジネスで発生する課題を知り、解決する力をうける。また、ブレーンストーミングやKJ法などの発想法を使って、アイデアを出す手法を習得する。

 

使用教材:

・「アントレの木」生徒用ワークブック

 

 

 

<学習内容>

     生徒用ワークブックの単元4「こんな商品ほしい!」のレッツチャレンジ7「アイデア探し‐チャンスを見つけよう!」をもとに、二回目の授業ででてきたアイデアを再検討する。

     KJ法を使って、商品化の際の課題、商品化の手順をまとめる。

     商品化の手順を模造紙一枚にまとめる

     生徒用ワークブックの単元7「ビジネスプランに挑戦!」のレッツチャレンジ13「ビジネスプラン」を、書ける範囲で記入する。

<授業者の感想>

KJ法のやり方,ブレーンストーミングの方法,それを絞り込むという方法についてはおおよそ理解したようだ。ブレーンストーミングではアイデアが多く出された。しかし,「どこでもドア」的な地に足がついていないものが多く,課題解決から商品開発へという思考プロセスから議論をスタートできなかったことが、そのような大風呂敷になってしまった原因であろう。またアイディア同士の関係を図示することで,問題解決を図るところまで行かないで授業を終えなければならなかったことで,思考が中断された様子であった。

7回目

8回目

9回目

リサーチとプラン再検討

 

ねらい

リサーチを行うことで、商品化やビジネスの課題店を点検し、その解決をはかる。

 

 

<学習内容>

     商品アイデアとそれをビジネス化するというプラン内容を再点検する。

     立教大学の廣江先生と若手起業家ウエッブハット・コミュニケーションズの高柳社長の講義を聞き、その後、ビジネスプランに対するアドバイスをもらい、内容の検討を行う。

<授業者の感想>

7回,8回と間隔をあけてしか授業時間が確保できず、学習活動への生徒の興味が拡散している様子が見えた。そのため急遽,9回目では生徒のモチベーションをたかめるために、外部講師の講義とアドバイスの時間をいれた。若い起業家の講演は、起業へのイメージや将来の仕事に対するイメージづけに大変貴重な機会であったが、講演が中心で、自分たちが作ったビジネスアイデアへのアドバイスを期待していた生徒にとっては、物足りない部分があったようだ。それとは対照的に、廣江先生の授業は、グループごとのアイデアに対して良い点・悪い点を指摘する講義となり、今後の学習活動の方向性を検討するうえで、大変参考になったようである。

ここからは,アイディアにダメ出しをするタイミングとそれができる人材の確保が授業をすすめる上でのポイントになることが見えてくる。

10回目

11回目

12回目

プレゼンテーションの準備

 

ねらい

構想段階のアイデアをプランとしてまとめあげ、人前で自分達の考えを伝える力を習得する

 

<学習内容>

     立教大学の廣江先生に、商品の具体性、特徴、消費者が必要としているものであるというデータ的な裏づけなどについて指摘をうけ、プラン内容を再度検討する。

     発表に向け、チーム内で役割分担を行い、分業体制をつくる。

     パワーポイントを使って、プレゼン用の資料を作成する。(パワーポイントを始めて使う生徒には、別途指導)

 

<授業者の感想>

廣江先生とのチームティーチングを行う。

生徒の準備が不十分で、廣江先生の鋭い指摘に頭をかかえるチームも見受けられたが、このような個別指導を何回か繰り返さないかぎり、生徒にとって「会社をつくる」ということのリアリティは、なかなか獲得できないと思われる。問題は,内容的なダメ出しを授業担当者が出すことが出来ない場合の内容のつめを,だれが・どのように行うかであろう。

ともかくここの部分の指導いかんによって発表の質および授業全体の質が問われる部分であることが生徒からの質問や対話のなかでよくわかった時間である。

13回目

14回目

発表会

 

ねらい

今前の取り組みについて第三者の評価を受け、同時に、他者の発表から、問題点、優れた点を学ぶ。

 

 

<学習内容>

     発表のリハーサルを実施

     発表(5分)と質疑応答

     審査員からコメントをもらう。

<授業者の感想>

接続に失敗した一チームを除き,他の全てのチームがパワーポイントを使って発表したが、生徒なりに発表方法を工夫し、見ごたえのあるものであった。中には相当商品化可能なものも出てきた。また,質疑に関しても,生徒どうしかなり深い質問が出て感心した。しかし、発表内容のほうは、審査員の指摘にもあったが、市場のニーズに応えた課題解決型商品に到達するには、技術的可能性の追求と市場調査も含めたさらに深い学習が必要であると感じさせるものが多くあった。

 

 

     生徒が用意した企画一覧

1

○フタタビチョーク・・チョークの再生によりごみを減らす

○食べられる割り箸・・木の代わりにでんぷんを固めたものにする

○字消しプリンター・・一度プリントアウトした文字を消す機能を持ったプリンター

〇油スース・・排水溝につける油を吸収するフィルター

〇レッツ充電・・歩いたり,走ったりすることで充電できる靴

〇ラクロック・・女性も簡単に押し込める自転車用スタンド

〇鉄道上部設置太陽発電・・電車の上にパネルを載せて省エネをする

2組

〇耳栓付きヘッドホン「しずかちゃん」・・耳栓とイヤホンが同時についているもの

〇ロイヤルポスト・・簡易コンポストボックス

〇食用廃油から作る石鹸サービス・・レストラン向け廃油処理サービス会社

〇からすの勝手にさせない奴・・からす退治のスプレー

〇ソーラー携帯・・自動充電の携帯電話

〇フロン回収会社・・フロンを回収して再利用する

〇地球防衛忍者「分け丸」・・ごみの自動分別機

 

 

 

 

3

〇万能孫の手・・マジックハンド利用の孫の手

〇ナビ・ステッキ・・杖にナビを着けたスッテッキ

〇消すモーク・・煙の出ない禁煙用タバコ

〇ペリーパソコン・・高齢者向けのシンプルなパソコン

〇バーチャル旅気分・・ネットでお土産を買えるシステム

24時間診療コンビニ・・ネットを使って診療,薬を出す

7

〇視覚障害者向けのナビシステム・・特に盲導犬にナビをつける

〇からとっち・・障害者向けスポーツ用品サービス

〇青春国立福祉タクシー・・障害者向け福祉タクシー

〇チェアナビ・・車椅子にナビをつけたもの

〇杖え杖・・ナビ付き杖

〇福祉市場調査会社・・ネットで福祉市場調査を代行する

 

 

 

 

 

 

 

8) 生徒による授業評価

 生徒による授業評価は全部で9項目の質問表を用意して,集計した。そのなかで本報告に関連する結果は以下のようであった。

生徒による授業評価

 

 

授業評価の項目

回答者合計

141

 

@

この授業の学習目的について先生から説明があり、取り組むうえで問題はなかった。

はい

93

68%

 

いいえ

44

32%

 

A

学習内容についての感想でもっとも合うものを下記から選んで○で囲み、その理由を書いてください。

 

ひじょうに面白かった(学ぶことが多くあり、もっと多くのことについて知りたい)

18

13%

 

面白かった(学ぶことがあった)

95

67%

 

普段の授業と変わらない

5

4%

 

あまり面白くなかった(学ぶことがなかった)

19

13%

 

まったく面白くなかった(学ぶことがまったくなかった)

4

3%

 

B

授業の中で興味を持って取り組めたのはどの活動でしたか。あてはまるものすべてに○をしてください。

 

 

グループで一つのテーマに取り組んだこと

48

34%

 

インターネットでの情報収集したこと

61

43%

 

集めた情報を分析したこと

28

20%

 

新しい商品やサービスの開発を考えたこと

103

73%

 

会社運営について考えたこと

51

36%

 

そのテーマの分野の企業人の講演を聞いたこと

42

30%

 

発表するためにパワーポイントなどの資料を製作したこと

58

41%

 

大学の先生や企業の人にアドバイスをもらったこと

48

34%

 

調査結果や提案を文章やイラストいりでまとめて提出したこと

11

8%

 

皆で協力しあって、一つのことを成し遂げたこと

47

33%

 

その他:実施したことを自由に書いてください。

4

3%

 

C

今回の学習活動を通して学んだことを選び、あてはまるものをすべて○で囲んでください。

 

グループで協力して活動する力がついた。

37

26%

 

インターネットで欲しい情報を検索する方法を学んだ

58

41%

 

新しい商品やサービスをどのようにして開発するのかがなんとなくわかった

95

67%

 

新しいものを創りだす創造力や発想力がついた

61

43%

 

宣伝や販売の方法がわかった

38

27%

 

人に取材してその結果をまとめる力がついた

6

4%

 

自分の考えたことを他人に伝える力がついた

23

16%

 

人前で発表する力がついた

20

14%

 

問題を見つける力がついた

54

38%

 

会社の仕組みについて前より理解できた。

93

66%

 

将来自分がつきたい仕事について前よりも理解することができるようになった

31

22%

 

地元にある会社や産業を前よりも理解することができるようになった

6

4%

 

前より社会にある問題について理解できるようになった

47

33%

 

社会にある問題について、解決方法を考えられるようになった

21

15%

 

D

今回の学習をするうえで、以前実施した株式学習やレモネード販売の取り組みは役立ちましたか。

はい

99

71%

 

いいえ

41

29%

 

 

4 授業への考察と生徒の声

 以上の結果を踏まえ,まず授業を振り返ってみる。

 

@授業への動機はまずまずではある

生徒の授業評価を見ていただければ分かるように,今回の授業に関して,生徒は,まずなぜこれをやらなければならないかをおおよそ理解して取り組んだことが分かる。

とはいえ,問題がなかったという生徒は68%であり,この数字は期待したものから言えば十分とはいえないと報告者は感じている。今回の授業は,「現代社会」と「総合的な学習の時間」のタイアップをねらいとして,両者を一体のものとして行う中で実施したが,教科学習における課題追及と,総合の時間に置ける課題学習の課題設定のギャップがでたのではと考えている。つまり,教科学習のなかでの課題追及は,生徒の興味関心より,教科指導のなかでの授業者の問題意識が先行するが,総合の時間の課題は生徒の興味関心,さらには課題意識からでてきたものを取り上げることが目指されるからである。自発性の強弱がここに出ていると推察される。その点で,説明が不十分であるとした生徒のなかで,最初から課題が決まっていたことによってやる気がなかったとした指摘した生徒がいたことに問題が集約されていよう。

しかし,興味関心が弱い生徒たちに,「さあ,きみたちの課題に応じて追求学習をしてごらん」といっても出来ないことも又事実であり,課題の設定そのものに相当時間をかける必要がありそうである。

 生徒の生の声を取り上げてみる。

◆問題はなかったとした生徒

・先生からの説明は十分であったと思う。

・理解はしていても、実際にどうすればいいのか考えるのは大変で、また面白かった。はじめはやはりとっつきにくかった。

・プリントや先生からちゃんと説明があった。

・環境というテーマは幅広いのでちょっと困った。

・説明は授業でされていたので、困ることはとくに何もありませんでした。

・環境の分野でやるという範囲が決まっていたのでそれについて考え、発展させ、一つの商品を目標にできた。

教わるというだけの授業ではなく、学ぶという授業もやってみたかったから。

・プリントやアントレの気の本もあったので、すぐわかった。

・充分な説明があったから。

・学習目的は説明されていたので、流れとしてはわからないことはなかったと思う。

・はじめる前に予備知識をつけたしたからやりやすかった。

・各授業時間、何をすればいいのか、わかったので。

・企業の目的など、明確にして取り組めた。

・初めての取組みなどで戸惑うことは多かったが、説明や資料があったので、何とかなった。

・ある程度の説明をされ、後は生徒が考えるようにしてあった。どうしてもわからないところは先生に聞くことができた。

・多少学習を進めていくうえでお金の問題など難しかったが、最初のレモネードの説明で苦労なくできたから。

・先生から充分な説明をもらった。

・先生からの説明はあったが、時間が足りなかった。社長という名前を持っていたにもかかわらず自分の力不足で問題もあった。

・事前に説明があったので、取り組みやすかった。

・専門家などの話や売り上げ予想の出し方などの学習をしていたので大丈夫だった。

・プリントで明確に書いてあったし、パワーポイントの授業展開の中でも説明があった。

     十分ではなかったとした生徒

・自分達で利益や収入、支出を考えた上で値段を決めるのが難しかったです。

・説明はあったが、どのように進行させれば良いのか、把握できなかった。

・説明について問題はなかったと思うが、取り組む上では「時間」が足りず、不十分だと感じた。

・最終的に企業を立ち上げて何をするのかがいまいち・・・。

・製品そのものを重視するか、会社運営・資本について重視するかがわかりにくかった。

・どのようにどんなことをすればいいのかわからなかった。目的も未だにわからないし・・・。

・どのような環境の商品を作ればいいかの例がなかったこと。

・はじめの方は、なかなかイメージがつかめなくて要領よく作業を進めることができなかった。最後にPowerPointでのプレゼンテーションをすることをきいてあせった。

・どのくらい本格的にやるのかがいまいちわからなかった(構造など)

・目的が、会社を設立するプロセスを学ぶためのものなのか、本当に実現可能な商品サービスを考えるためのものなのかがよくわからなかった。

・目的があまり明確でなかった気がする。会社を設立するために必要なことが理解できればよかったのだと思うが・・・。

・どこまで正確にプランを立てれば良いか、いまいちわかりませんでした。(時間の足りなさもあって)

・目的は説明されたのでよくわかったが、取り組む時間が少なくて不完全なままで終わってしまった。

・新たな商品を考え出すということははっきりしていたが、その商品を考え出した後の作業や、会社の運営方法などにかかわる金銭面的なことが良く理解できなかった。

・何のために会社をつくるのかについて、班の中で言い争いが起こった。

・説明こそあったものの、既に決定した事柄として伝えられたから問題あったと思う。

・時間が足りなかったため十分な調査ができなかった。また、企業家の方とお話する機会がもっともうけてあればより斬新なアイデアが生まれただろうと思う。

 

A生徒は授業そのものには満足している。

 これも数値をみていただければわかるが,非常に面白かったと面白かったの二つをあわせると80%の生徒が授業そのものには満足している。これはかなりの成果であるとはいえよう。満足したとした生徒の多くは,新しいことに挑戦したこと,頭を使ったが挑戦のしがいのあることだったこと,企業経営の難しさとおもしろさ,さらには大切さを学んだことをあげている。それに対して,不満であった生徒は,課題が最初から設定されていたこと,時間のなさ,どこまでやるべきなのかが見えないことへの不安をあげている。これらは,当初の課題設定時の丁重な指導に還元されるべき問題であろう。

 生徒の生の声をここでも取り上げてみる。

     面白かったとした生徒(非常に面白かった,面白かったをあわせて)

・インターネットやパワーポイントの活用などが楽しく作業できた。一つ一つのことについて、みんなで考えるのがとても楽しかった。

・新しい商品を考えるということは普段やるようなことではないし、なかなか思いつかなかったが、非常に興味がもてた。

・なかなかこんな体験できないと思う!大変だったけれど、すごく頭をつかった。(満足いく企画にはならなかったが)今回のテーマは環境だったけど、別のテーマで、もう一回やりたい!

・みんなで意見を出しあった、ユニークなものを作れたから。

・普段の生活では考えないことや、やらないことを体験できた。

・この授業を進めていくにつれ、法律など、いろいろな壁に妨げられた。そのことによって、私は自分の知識の少なさを思い知らされた。また、それらの知識を得るという知る楽しみを味わった。

・先生の、私の案の隙間をつくアドバイスがとてもためになった。

・自分で会社を作る経験なんてあまりできないことだから。

・企業を立ち上げることがどんなに難しいかわかったし、消費者が1番必要としているものを見つけるためには行動をおこさなければいけないと言うことを学んだから。

・ビジネスの仕組みやお金の流れがよくわかり、将来に役立つと思ったから。

・今まで興味はあっても取り組む機会がなかった。他のグループの意見なども参考になった。

・今まで、このような取組み(特に会社や企業)がなかったし、将来についてのことでも後にたつものがあった。

・分野がおもしろかったし、二度とできないだろうから。

・班のメンバーがよくて、意見がよく出て、有意義な話し合いができたから。

・友達といろいろな意見を出しあって、出せば出すほど良くなることがよく分かった。

・普段こういった授業はやれず、新たに知った事、体験したことが数多くあったから。

・学ぶことが多く、実際にこのテーマで残業したいと思った。

・今まで学習したことのない種類の授業で有意義だった。

・自分達で会社を作るために努力や協力をしていくことがどちらかといえば面白かった。その過程で学ぶこともいろいろあった。

・パソコンを使って、プレゼンテーションをすることが初めてだったので、パソコンへの苦手意識が減ったから。

・自分で色々と考え、発展させていくのは面白く、大変だったが学ぶことがあった。

・自分達で考えて、プレゼンテーションするのが初めてでとても新鮮だったから。

・自ら調べたり、と普段とは違うことができた。

・教授の話から、学ぶことがたくさんあったから。

・プラン作りの苦労を味わったから。

・自分達で全くやらなければならなくて、大変なこともあったけど、楽しかったです。

・思ったより環境保護を目的とする製品・サービスが多くあること、会社を立ち上げることの大変さを痛感しました。

・自分達でやんなきゃ!って思ったから。

・やはり、どうすればこの問題を解決できるかということが学べたのが大きかった。

・普通の授業で体験できないことをしたから。

・今までと違う視点を見つけることができたから。

・会社を作るうえでの苦労はわかった。今後どういう風にプレゼンテーションすべきか少しわかった。

・会社をおこすと言うことに興味や関心がわいた。

 

◆面白くなかったとした生徒(あまり,全くをあわせて)

・環境にしぼらないビジネスを考えたかった。

・人前で発表するのが苦手だから

・授業時間が少なくあまり興味が沸かなかった。

・時間は限られてるし、考えてもいろいろダメだと言われるし、そんなに簡単にアイデアか浮かんだら、私達は本当に企業を作れます!プレゼンはおもしろかったです。

・テーマが難しい

・内容に対して興味がわかなかったので、あまりやる気が出なかった。

・やり方がよく理解できなかった。

・福祉のテーマは中学でやったし、やるならやるでもっと時間をかけたかった。

・時間が足りなかったので、頭で考えるのみでリアリティに欠けていた。

・時間が短く、哲学の学習と平行していたので調査があまりできなかった。

・やる気がわくような内容ではなかった。

・グループの話し合いがうまく進まなかったから。

・社長があまり指示してくれなかったから。

・結局、何を学んだのかがわからなかった。長い時間を費やしたので、もっと達成感が味わいたかったから。

 

B生徒が興味を持って取り組んだ内容は,新しい商品やサービスの開発である。

 73%の生徒が新製品の開発を興味を持って取り組んでいる。以下,インターネットでの情報収集,パワーポイントでの資料作成,部外者からのアドバイス,グループでの活動と続いている。授業の一連のなかでは,それほど熱心ではなかったように見えた時期もあったが,全体としては中心となる課題を確実に見据えて,それに到達するための方法を学び,体験することに挑戦していることが分かる。

◆自由記述にかんして数は少ないが,これも生徒の生の声をあげておく。

・他の班の発表を聞いて、本当に現実にあったら良いのにと思うものもあって、経営をいていくには他人の意見を聞く事も大切なのだなと感じました。

・実際に商品をつくってみたこと。

・発表を聞き、そこからいろいろなことを考えたり、問題点を指摘した。

 

C生徒は,商品開発の方法がなんとなくわかり,企業の仕組が前より理解できたと自己評価している。

 ともに60%を超える生徒がそのように評価している。ここでも,生徒は当初の不安や戸惑い,時間の制約をこえて挑戦していることが分かる。

 以下,新しいものを作る創造力がついた,インターネットで検索する力がついた,問題を見つける力がついた,社会にある問題について理解できるようになったが続く。ここでは,問題を見つける力,問題について理解できる力,さらに問題を解決する方法を考えられる力など授業のなかで育成を期待される項目は30%台もしくはそれ以下という結果で,生徒の指向が商品開発に向かい,それ以上に広がりを持ちえなかったことが数値ででてきている。問題発見などの部分に関しては,今後の課題がここで提起されたと考えるべきであろう。

◆ここも自由記述の欄から生徒の生の声をあげておく。

・会社を作るには、商品のアイデアだけでなく、具体的な資本を考える必要があるということ。

・まわりのものに疑問をもつことの大切さを学びました。

・実際に企業を起こすには、資本金を集めたり、コストと利潤を考えて値段を考えたりと、大変だということを学んだ。

・環境問題は、現在深刻な状況だが、多くのアイデアが出ることにより、それらをこれから少しでも減らしていくことができるということがわかった。

・会社を設立するのがどれほど大変なことかわかった。

・準備は念入りにやればやるほど良いと思った。また、その案に対して自分で質問を捜すと問題点がわかると感じた。

・全く新しいものでなくても「既存のものをくっつける」ということも「創造」なのかなぁと思った。

・新しい商品が発売するまでどれほど大変かとてもよくわかった。ヒットをだすって本当に難しそうだ。

・社会に出て行くことの不安が増した。

・欲しい物とたくさん売れる物は似ているようで似ていないことがわかった。けれど、実際に何がウケルだろうと考えるのはとても難しかった。

・まだないものを考える事の大変さを知った。

・リスクを負うことは怖いが、起業家として成功できたら、人生に充実感を得られると思う。

・信頼が大切なんだなと思った。

・社会がどんな風に動いて、また、今どこが足りないのか新しい目で見られるようになった。

・知っているようで実は知らないことがたくさんあることに気付いた。

・様々な要素が絡み合って、企業は成り立っているんだなと思った。

・税金、減価償却などの仕組みがよくわかった。

・今回の企業つくり発表を終えて、製品をつくる上で、対象者へのリサーチがないというのは致命傷だと痛感した。

・企業の難しさを知りました。何においても様々な角度から見れるようになりたいと思いました。

・自分達で会社を作るということがどのくらい難しいのかよくわかった。会社を作ろうと思ったら、それに先立つものや人がいろいろ必要。特に、特に、ひとのかかわりあいがとても重要だと思った。

・グループでもっと協力できればよかった。

・新しいものを創り出すことのむずかしさを痛感した。やっと考えて出したものがすでにあると知ったときはショックだった。社会に出ている商品・サービスを沢山知っている必要があると思った。

・起業家は天才なのではない。一般人と違うのは、行動力と創造力ではないだろうか。

資金の話がなんとなくわかった。

・社会の運営にかかる様々な費用、税金について具体的に知ることができた。

 

D「現代社会」での授業を踏まえていることが取り組みに影響する。

 「現代社会」での経済の授業が今回の取り組みに影響を与えたとするものが69%,約7割いる。もし,これが独立に総合が取り組まれたらどうなるか。おそらく経済のイロハから知識を入れなければならないとすると,時間的にも内容的に非常に厳しいものとなったことが予想される。ただし,ここでも問題は残る。7割は少ないと考えるともっと「現代社会」などの教科の授業と総合を有機的に結びつけることを試みる必要があろう。

 ここでも生徒の生の声を上げておく。

     影響を与えたとした生徒

・レモネード販売の取り組みで、資金のことなどがわかったから。

・レモネードで、実際にかかる費用を計算してみたことが役立った。

・株式学習ゲームはおもしろかった!!自然と興味がわきました。

・経済の仕組みのことを少しでも知っていたので、飲み込みやすかった。

・役立ったというか、基礎知識としてそれがなかったら何もできなかった。株式はそんなに手軽に資金を集められることとか、利潤の出し方とかわかったので、とても良かった。

・どのように価格を決めればいいのかがよくわかった。資金をどこから集めるかがわかった。

・会計の仕方など

・経済がよくわかり、どうやったら売れるのか参考になった。

・お金の考え方でレモネードは役立った。

・企業を立ち上げる際の注意点や、問題点、流れを事前に学ぶことができたから。

・そのおかげで、社会の状況や計算の仕方等も分かっていたので、スムーズにいけた。

・需要、供給や仕入れ売値などの関係がわかっていた方がやりやすかったから。

・お金の使い方、動き方が役に立った。

・株式ゲームはあまり役に立たなかったが、レモネードはどのようにしたらたくさんうれるのかを考えた上で役立ったと思う。

・価格の決め方etcがわかったから。

・前月の売り上げを翌月の生産費にあてる、拡大再生産をするための費用にするなどのやはり金銭面のやりくりの簡単なとらえ方。

・価格を決める上で役立った。

・資本金の集め方etcでとても参考になった。

・売れるだけではダメで、利潤をしっかりと稼げないといけないこと。

・株式の存在や活用の仕方を知っていたので活用できた。

・株式の意味がわかり、会社の設立に必要な条件の満たし方が具体的によくわかった。レモネードではインフレとデフレの発生の仕組み、対処方法について、ある程度知ることができた。

・お金のことを考えるときに料金設定、資本金集めなどの点で役立った。

・株式を発行するその仕組みや、その後のデフレ、インフレなどの経済状況も起業には密接に絡んでいたから。

・資金のことの基礎が役に立った

・会社をたてる上で必要なもの(金銭など)の知識が役に立った。

・レモネードの需要と供給とか、株式を用いて資本を得ること。

・資金のことなどはレモネード販売で学習した。得た知識がとても役に立った。

・経営するための方法や、どうすればいいか異なるところはあったけど、基本はそこで学んだと思ったから。

・株式学習は資本金集めの手段として。そして、現在の日本経済の働きを知る上で必要。

・レモネード販売で企業の基本的なあり方や、デフレ、インフレ時の対策力などに役立った。

◆いいえとする生徒

・「いいえ」というか、自分で活用する意識がなかったから。もしかしたら、意識していたのかもしれないし・・・。レモンはしていたかも!!

・このアンケートを見るまで関係を考えてなかった。

・企業の立ち上げには役に立った気がしない。

・いいえ、ではないかもしれないけど、意識して一つも使ってないので、一応。

・どんな商品にするかということばかり考えていて、資本金のほうはあまりよく考えなかった。

・株式のほうまで手が回らなかった。時間が足りないです。

・別の話だと分けて考えてしまったので、株式学習などの気にしなかった。でも実際、「会社をつくる」という学習だったので、レモネード販売などを参考に、資金の事を考えるべきだったと思う。

・資金計画のことを忘れていたから。

・今回の場合、微妙にレモネードと結び付けにくかった

・取り組んだ知識を使わなかった。

・商品の開発に夢中になってしまい、企業と経済のつながりや経済面を考えるまでに至りませんでした。ここを考えることができたらもっとリアルな計画になったのではないかと思います。

・つながりがよくわからなかった。

・具体的な企画を考えるものだから。

・いままで学習を利用せずに、考えていたから。

・直接関係する部分もなく、特に影響はなかったと思う。

・準備の時間が短すぎて、株式や企業の運営方法について考えるにまで至りませんでした。もう少し準備期間がほしかったです。

・商品やサービスのアイデアばかりに気を取られて、実際の経営のことがあまり考えられなかった。

・うちの班は、資金計画を立てるところまでいかなかったので・・・。資金計画までたどりついたらすごく役立っただろうと思う。

・最初から最後まで、みんな「私には現実には関係ない」のままで終わってしまったから。私ももちろんその一人。あまり必要性が感じられなかった。実際に自分で株を買ったり企画を起こしたりするほどのお金をもった事がないし、持てないからだろうと思うからでしょう。

・実際に企業を起こすことを考えると諸費用がかさんでしまう。

・何をどう活かせばいいのかわからなかった。

・両方まじめにやらなかったから。

・どう応用していけばいいのかよくわからなかった。役立ったのかよくわからない。

・以前の学習は社会や経営の仕組みを学ぶのであったので、今回の「創造」という目的とは少しはなれていた

 

E生徒は達成感と課題を感じて授業を終えている。

 以下は生徒の自由記述を紹介する。ここで,生徒は達成感と多くの課題を抱えていることを正直に告白している。

 また,成果の中には,ネット検索,プレゼンテーションの方法,KJ法,ブレーンストーミングなどの方法をあげている生徒がいるのも特徴である。

     えたもの

・一つの商品を出すのに調べることがたくさんなるということが良くわかった。

・KJ法という画期的な方法を教わったのがとてもためになった。僕は環境を守る何か(具体的にはまだ決まっていませんが・・・。)を作りたいなぁと思っているので、この経験を生かしたい。

・収支会計や値段のつけかた。

・視野が広くなった。今までは、学校生活や身の回りの事しか見えなかったが、少し社会が見えた。商品のアイデアの出し方がわかった。

・自分が便利だと思っても、対象者から見ればちょっとやりすぎだったり、不便だったりするということを学び、多方から見なければいけないと学んだ。

・経営していく難しさについては学べたと思う。

・何事も計画をたてる際は、できるだけ細かく具体的に立てることが必要で、自分で自分を客観的に見ることが必要だと思った。また、既成の概念にとらわれないことも大切だと思った。

・自分達の考えがいかに甘いか知った。また、企業など身近にあっても遠く思える存在のものの事をもっとよく知る良い機会になった。

・やはり、信頼が大切なんだなと思った。会社を若いのに立ち上げた人が来た時も毎日知らない人に会って情報網や、信頼を得ていたので必要なんだなと思った。

・発想の転換の必要や実際の街頭調査の大事さ

・自分達で開発した物には責任を持ち、あらゆる問題となることを考えなければならないこと。

・基礎からしっかり考えておく事。

・企業についての基礎知識。新しいものを作る大変さ。

・金銭的な面でのシミュレーション。(その製品一つにつき・・・、一ヶ月で・・・、収支は・・・、利益は・・・etc

・机上の空論に真実はついていかないから。行動しなくてはいけない。

・パワーポイントのやり方。みんなで締切り等を守って仕事すること。

・企業を立ち上げることは実力信頼を伴い、資金のやりくり、想像力が必要だという考え方。

・商品を売り込むこと。後援や価格、自分のアドバイスをいかに上手に伝えられるかなど。私には苦手なことが多かったので、高校を卒業する前には出来るようにしたいと思った。

・会社をつくるのは、とても難しいという事。しかし誰でもつくる事が可能だということ。将来の選択肢が増えた。

・自分達でアイデアを練ろうとする意志。情報の大切さを知ったこと。考えのまとめ方。

・企画力・税についてちょっぴり・知識

・会社を運営する上で必要な条件、手続き、様々な費用について多くのことを学んだ。・・インターネットを通して市場を調査し、自分達のために生かしていく方法が身についたと思う。

・調査のしかた、企業設立に至るまでの壁を少し理解した。

・日本の福祉の現状、起業の方法、企業の仕組みなどが理解できた。

・プレゼンの手順が理解できた。納得するまで追求する班内の人をみて見習った。

・発表会での原田さんの言葉はとても響いた。物事に対して偏見を捨てられねば成功はありえないのだろう。

・ブレインストーミングによる意見の出し合い。これによって柔軟な考え方、効率の良いアイデアの出し方を学べたと思う。今後生きていくために、こういったアイデアの出し方を学べたのは、非常に大きかったと思う。

・発表の後の講評で原田さんが言ったこと「足を使って調べる」自分の足で直接調べるという姿勢が大事だということが分かった。

・インターネットを使って様々な面から一つのことを調べることができた。企画書がどのようなものかを知った。パワーポイントの使い方を学んだ。

・インターネットで欲しい情報を検索すること。

・会社の仕組み、立ち上げ方が分かってよかった。

・発想を「行動」に移すことの大切さ

・講師の方の話などから、一人や会社だけではできないことも、多くの人脈があればできることがあるということを知り、人とのつながりは大切だと感じた。

・アイデアをさらに発展させる意欲が身についた。

・まず人に調査してみるということ

・新しい商品やサービスのプランを考えてその問題点や改良点等を見つけだしていくこと

・自分のやりたい事やしようとしている事をいかに相手に伝えられるかが重要だと思った。そのためには簡潔で説得力のあるプレゼンテーションが大切だと思った。

・商品になり得るものは意外に自分の周りにあるということ。

・発表会の時に先生が言っていたように「行動する」ということは大切だと思った。

・パソコン、インターネットの技能。周りの意見をしっかりと取り入れること。周りの信頼。たくさんのアイデアを出しても、現実的には不可能であきらめざるを得なかったから。

 

 

◆苦労したこと・要望など

・なかなかほしいと思う商品が思いつかなかった。

・何を作ったらよいのかを決めることが一番どうしたらよいか困った。

・商品を開発する中で、環境をテーマにすると、商品を造らないほうがいいんじゃないかという考えに行きついてしまった。

・伝えたいことをうまく伝えること。アイデアが出ても実現が困難なものが多いこと。

・先生側の意図がわかるまで何をやれば良いかわからなかったこと。水準を自分で上げられない。

・先生のするどく、痛い質問に答えること。答えることはできなかった。

・テスト後に大慌てで分担し、作業を進めたこと。発表前日のパワーポイント製作。

・自分たちの考えた商品をどうやってみんなに理解してもらうか考えること。

・発想。すぐに欠点が見つかって、まともな意見がほとんど残らなかった。

・どのアイデアを採用するかが一番悩んだし、大変だった。

・アイデアを実現性高いものになるように設定するのが難しかった。

・いろいろな問題を指摘しても、その改善策をどのように具体化するか考えるのが難しかった。

・KJ法でアイデアを出すこと。

・資料を集めること。調べれば調べるほど「じゃぁこの時はどうなるんだ」と、どんどん深くなっていく。

・その商品が実現すること、売れることを確信づける事が大変難しかった。仕事の分担(社長として、上手くみんなを適材適所に置けなかった。)

・情報収集、知りたい情報を集めるのが大変だった。

・製品のしくみや値段について考えたこと。

・自分ではなかなかアイデアが思いつかず、身の回りの事に満足しているだけで、疑問などあまりもっていなかったのが反省です。さらに、そのアイデアが本当に世の中に出てやっていけるのか、など普段は考えることが無いので、とても大変でした。

・時間が少ないし、人は集まらないし、社長だったので負担がとても大きかった。

・自分の考えを整理して発言すること。今、ないもので環境問題解決のために必要であるものを考えていくこと。

・最後の方のまとめの部分、それと、資本金の集め方、(高校生で集められることは可能なのか)

・商品を考えること。考えてはみたものの、不可能そうだったり、自分はあまりほしいと思えなかった。

・やはり実施期間が短かったこと。その短い時間でアイデアをひねりだし、調査をし、訂正を繰り返してモノを作っていくことはとてもしんどかった。

・自分達独自の製品を考えること。現実性を持ちながらもオリジナリティーがあるものを考えるのは難しかった。

・最後のプレゼンで意見をもっといえたら良いものになると思う。ぐちゃぐちゃにされて強くなることもあると思う。

・環境などのようなテーマを決めずにやった方がもっと自由なアイデアでできたのでそっちの方がいいと思う。

・時間数が少ない!足りない!でも、面白い。(でも、将来会社を創ろうとは思わない)

また是非やってみたいと思う、今回はやはり中途半端に終わらせてしまったと思うので、今後こういう機会があったときは今回の反省を活かしたい。

・時間が短いと思った。実際に商品を作ってみたい。

・新しいビジネス(環境にしぼらず)を考えたかった。いくつか考えてあるのもあるし、もっと自由な粋で考えたい。

・身近な問題に対する解決策となるような企画を考えたりしたことはとても良かったと思う。どんな問題があるか考えるようになったし、その改善策を考えられるように、今から様々な知識や経験を身につけたいと思うようになった。

・会社をたちあげるのは想像どおりとても難しいけど、いろいろ考えるのはとても楽しかった。

・最初は一般家庭向きの商品やサービスを考えるということになっていたが、企業向け、団体向けといったものを考えている班が多かった。

・毎回の授業で、決めることをしっかり決めていけば、もっと楽だったかなと思いました。予算について、自分は良くわからなかったので、もう少し説明がほしかったなと思います。

・今後も続けてほしい。

・福祉にたずさわる人の話を調査段階で聞くべきだったと思う。机上の空論になってしまった気がする。

・もっと長期的に、課題を一つ一つ解決しながらしっかりやりたかった。三ヶ月足らずでやるのはきびしい。

・企業の成立についてとても役立った。

・「時間が欲しい」ただこの一点に尽きる。時間があればもっと深く調べることができたのにと思う。そうすれば、よりよい商品やサービスが生まれたと思う。

・やはり時間がないのはつらかったです。あと外にでて、実際にインタビューにいける時間をつくってほしいです。

・結構具体的なところまで計画を立てられたので、リアリティがあっておもしろかった。

・他のクラスの発表を見ることができてよかった。7組の人の質問はすごく鋭いとこをついていて、圧倒された。プレゼンはパワーポイントの使い方しだいで説得力が全然違うのだと気付いた。

・先生達にとっても試験的な取り組みだった様なので、生徒側にも多少のとまどいはあったが、少しでも「起業家になる」ということに関われたのはよかったと思う。

・夏休みなどの休業を使ってほしい。期間が短かった。

・考えれる限界というか、どこまで考えるのかの幅がわからなかった。

 

5 授業から得られる総合学習での企業家教育のすすめ方

生徒にとってはじめての体験である授業であったが,報告者にとってもはじめての体験の連続であった。正直,当初はいままでの授業と同じように,ある程度の準備をしておけば,こちらの掌で生徒は動き,期待する成果をあげてくれるであろうとの「安易」な予想を立てていた。しかし,実際は大きく異なった。

 その第一は,時間の絶対的不足である。これは生徒も異口同音に発言している。当初は,6時間程度で起業の入り口くらいまでゆくであろうと想定していたが,結局,一クラス14時間以上がかかっている。それでも生徒の発表を聞いていて,ユニークさやプレゼンテーションのうまさには感心しつつも,内容の薄さ,安易さには暗澹たる思いもいだくような結果であった。ここまでは廣江先生も指摘しているが,まさに中間発表程度の段階であるとすると,時間的には一年間分,30時間は欲しいところである。企業家教育は時間の確保という点で,総合的な学習にふさわしい。

 第二は,生徒をどこまで追い込むかの見極めが難しかったことがある。これは,生徒が活動する授業ではおこりうるのであるが,企業家教育に関しては従来の授業と質的に異なっていた。それは従来の授業では,それがシミュレーションのようなアクティビティであっても,教師があらかじめ結論なり枠組みをつくってそのなかで一定の知見や発見をさせるという,統制された活動が目指されるのであるが,企業家教育では全く新たな発想や実践力の育成を目指すという点で,どこに着地点があるか見極めが着かない点があるからである。もちろん,学校の授業という枠はあるが,それを超えて前進することを目指していることから言えば,教師の思惑をはるかに超える部分がおこりうるのである。それにどこまで対応すべきか,対応できるかが常に問われる授業であった。ただし,生徒が地に足をつけた探究学習をするには,通常の授業における知識や技能の学習があらかじめなされていることが必要である。その点で,総合の授業をそれだけで完結させることは総合の総合性をかえって失わせる可能性があると思われる。

 第三は,外部の人々の協力なくしてはとてもやってゆけない授業であるという点が骨身にしみたということである。生徒の発想に対して,きちんと応えることは授業者である教師一人ではとてもできるものではない。そこには,専門家のきちんとした「ダメ出し」「援助」が必要となる。そのネットワークなり,人的援助がないところでは中途半端な指導しか出来ないことがはっきりと浮かび上がった。その意味で,起業経験も授業者にとっても企業家教育は,試練を与えるものである。

 第四は,教室や学校だけで完結しないということが明らかになったことである。今回の発表でもわかるが,生徒は提案した様々な器具やサービスに関して,マーケットリサーチも,技術的なつめも十分に行えていない。これは,時間の制約だけでなく,学習が教室や学校のなかで完結するという観念を打ち破れていないことを表している。これは,インターネットで簡単に情報が手に入ることによってかえって助長されてしまっている面もある。汗水たらしてデータを集めたり,インタビューをしたりしながら,現場主義でアイデアを積み上げることなく,安易にブレストを行い,KJ法を実施してもそれは空中楼閣である。その意味で,教室を離れ,学校を離れ,実際に出向く現場主義が必要になる。

第五に,現代生徒の弱点がかなり明確になることである。これは,廣江先生が日経新聞で「生徒たちのアイデアには,現実社会から自らの問題を見つけ出すことへの戸惑いと,自分の知識や経験をアイデアつくりに応用することに不慣れ様子が色濃く映る」と指摘している問題である。これは,生徒が不慣れなだけでなく,授業者の教員自身が不慣れであることの反映でもある。企業家精神の育成は,生徒と並行して教師にもなされなければならないだろう。

いろいろ指摘したが,特別授業を実施して報告者はよかったと思っている。それは生徒の弱点だけでなく,いままでの社会科の授業,現代社会の授業の弱点がはしなくも露呈されたからである。

企業家教育の本来は,起業を目指す若者を作り上げるところにあるのであろうが,もっとひろく問題を問題として自覚し,それを解決するツールやスキルを身につけ,実際に立ち向かう若者を生み出すことを目指していいのではないだろうか。この広い目標は,社会科,公民科がもっている本来の目標を実現させることと通じる。その意味では,報告者の場合,経済教育の観点から授業を行ってきたが,概念教授指向や理論指向が強く実践性が弱かったという問題点をあらためて振り返ることができるチャンスとなったし,それを克服する可能性を秘めたものを企業家教育がもっていることが確認できただけでも,十分な成果であったと言える。

 

6 まとめと展望

 今回の報告は授業における生徒の生の声をできるだけ多くあつめてみた[7]

結論的に,企業家教育は「総合的な学習の時間」にふさわしいテーマである。時間の問題,課題設定の問題,調査・発表の技能開発の問題,生徒の進路も含めた生き方の問題,なにより主体的に問題を解決してゆこうとする意欲と技能を高めるという目的を達成するための様々な契機を内包しているという点で大いなる可能性を持っているといえよう。

 今後,十分な時間設定の下で,より深い学習ができるようなカリキュラム開発に進みたいと考えている。

 また,理論研究,比較研究など理論面は今回は十分に触れることができていない。これは他日を期したいと考えている。



[1] 企業家教育は起業家教育とも表現される。原語は両者ともentrepreneurであり,シュンペータのアントレプレヌールシップから由来する。本来訳語は企業家であったが,近年の起業を促進しようという動きの中で当て字であった起業家が市民権を獲得しつつあり,経済産業省などは「起業家教育」を使っている。なお,本報告では企業家を使用する。

[2] 拙稿「公民教育と総合的な学習の時間の関連に関する一考察」公民教育学会2004年度研究大会自由報告での報告書(未刊)参照。

[3] 同センターは,京都リサーチパクにある元起業家教育センターであり,その主な活動はhttp://www.entreplanet.orgで見ることができる。

[4] 「ベンチャーキッズ」は,大江建・杉山千佳『「起業家教育」で子どもが変わる!』日本経済新聞社1999に詳しい。

[5] 昨年の本学会での自由研究報告に,山根教授の指導のもとでの三重大学附属中学での実践報告がある。

[6] 授業実践の意義と経過は,廣江彰「自ら考え実行する力を」(日本経済新聞200436日付け教育面)にある。

[7] 生徒の声の全体は,立教大学『アントレ教育研究会報告書』に全文が掲載されている。

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2007 © Akira Arai