第2章 働くことと雇うこと
1 雇用
「働く」ことと「雇う」こと
雇用とは「雇って仕事をしてもらう」ことです。雇う側を雇用者といい、「雇われて仕事をして賃金をもらう」側を被雇用者といいます。
働き方にはいろいろあります。新しく自分で会社をつくって自ら働く「起業」、企業や官庁に就職して働く「被雇用」、家族でする小規模な事業を引きついで働く「自営」などがあります。でも、君たちの大部分は会社に雇われて働くはずです。
君たちが、近い将来、必ず出くわすはずの「雇用」について考えてみましょう。
1 君たちの大部分は企業に就職して、雇用される
さまざまな雇用のかたち
@会社員(事務職 営業職 エンジニア 客室乗務員 パイロット ほかにもたくさんあります)
A専門職(医師 獣医 弁護士 会計士 税理士 保育士 看護師 介護師など)
B公務員(地方自治体や国の職員)
C教員(小学校から大学まで、そして塾の先生もいます)
D派遣社員(「派遣会社」という会社の社員になり、他の会社の注文に応じて働く人)
Eプロ・スポーツ選手(野球選手 サッカー選手など)
F芸能人(俳優 歌手 タレントなど)
Gフリーター(決まった仕事にはつかず、短期間のアルバイトをしながら生計をたてる人)

考えてみよう1
夢をかなえ、やりがいのある職業につこうとすれば、目標をめざして努力しなければなりません。自分の才能や特技を活かすことも大切です。君の将来の夢や希望はなんですか?
には自分が思っている言葉を、( )には上の雇用のかたちを参考にしてみましょう。
「私は[ ]の勉強をして( )になりたい」
「私は[ ]という特技を活かして( )をめざしたい」
「私は[ ]が好きだから( )の仕事につきたい」
解説
2004年12月末現在、6306万人の就業者(仕事についている人)のうち、雇用されている人は5362万人(約85%)と、大部分の人が雇用されているのです。企業の雇用のあり方がムダを省くことをモットーとするようになったため、私たちをとりまく雇用環境は大きく様変わりしました。
多くの企業、国、地方自治体などが雇用者の数を減らしつつあり、正社員*として採用する人の数を最小限にとどめるようになりました。その結果、@完全失業者数*の増加(失業者数270万人・失業率4.4%。ピーク時の2003年は340万人、5.5%)。A派遣会社*に登録しておき、他の企業からの求人に応じて派遣社員として雇われる人の増加。Bフリーターの増加。
君たちは、こうした雇用環境の変化にうまく「適応」していかねばなりません。
(文中のデータは総務省s統計局資料より)
コラム
日本の職場は外国人に対して閉鎖的でした
外国人が日本で安定した仕事をみつけるのは、たいへん難しいことでした。医師、弁護士、公務員などの国家試験を受験する資格も、長い間、外国人には与えられていなかったのです。プロ野球でも、同時にベンチ入りできる外国籍選手の人数は限定されています。 最近では、銀行や証券会社をはじめ、多数の外国籍企業が日本に進出しています。それら外資系企業で働く日本人、日本の企業で働く外国人の数はどんどん増えつつあります。日本もいよいよ国際社会の仲間入りを遂げたのです。
2 雇われる者の権利と雇う会社の義務
雇う側と雇われる側の力関係を考えてみると、雇う側が強いに決まっていますよね。雇われる側が文句をいえば、雇う側が「解雇」できるからです。弱者にとって不利にならないように、雇われる人々の権利と雇う会社の義務が労働法という法律によって定められています。主な労働法としては、労働基準法、労働組合法、労働関係調整法の労働三法があります。労働基準法は、給料、働く時間、休日などについて具体的に雇用者の義務を定めています。
1999年に改正・施行された男女雇用機会均等法*は、女性が働く上で不利な扱いを受けることがないよう、採用時そして勤務のあり方において、男女を平等に扱うことを定めています。

*正社員
フルタイムの社員のことで、安定した雇用、高い処遇の反面、拘束度(労働時間、就業場所、仕事に関する自己選択の自由度)が高い社員のこと。拘束度が低い反面、雇用の安定性、処遇面での条件が低い非正社員とに二極化しています。
*完全失業者数
現在、仕事をしていないが、仕事をする意思があり、職探しをしている人を完全失業者といいます。また仕事探しをあきらめてしまうと失業者とはいわず、非労働力人口に入ります。
*男女雇用機会均等法
この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念に則り、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図ることを目的としている法律のことです。
考えてみよう2
次の表は、ある新規中学卒業者対象の「求人票」からの抜すいです。労働基準法にそっている項目だと思われる求人一覧表の記号をそれぞれ選び、( )の中にA〜Mを記入しましょう。
《労働基準法》
@ 労働時間・第32条=一日の労働時間は8時間であり、一週間に40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えて労働させてはいけません。( )
A 休日・第35条=毎週少なくとも1日の休日または4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。( )
B 労働条件の明示・第15条=就業場所、業務内容、労働時間、賃金等について、書面で明示しなければなりません。( )( )( )( )
C 賃金の支払い・第24条=賃金は、通貨で、労働者に直接、毎月1回以上、一定期日に全額を支払わなければなりません。( )
D 時間外、休日および深夜の割増賃金 第37条=時間外、深夜(午後10午前5時)に労働させた場合には25%以上、法定休日に労働させた場合には35%以上の割増賃金を支払わなければなりません。( )
答え(模範解答)
●考えてみよう2……@ G A H B B・F・G・I C I D L
3 給与はどのようにして決まるのでしょうか
解説
働くことへの見返りとして、毎月定められた日に、雇用者は被雇用者に給与を支給しなければなりません。ここ数年、給与または賃金の決まり方に大きな変化が生じつつあります。
10年ほど前までの日本では、ほとんどの会社が年功序列賃金制(年齢に応じて20代の独身時代よりも、30、40代の生活責任が重くなったときに賃金が高くなるような制度)を採用していましたが、日本経済が長期停滞(1991年以降)におちいってからは、年功序列賃金制を維持することは難しくなってきたのです。
そのかわりに、仕事の「成果」によって給与を決める、アメリカでは当たり前の成果主義賃金制をとり入れる会社が増えつつあります。
(例)年功序列賃金と成果主義による賃金

Aさんは、勤続年数とともに賃金が上がる(年功序列賃金制の)会社に定年まで勤めました。Bさんは、仕事の成果によって給与が決まる成果主義(能力給)の会社に定年まで勤めました。
それぞれの平均賃金(月額)は以下のとおりでした。
(表)
4 君ならどちらを選ぶ?
プロ野球でおなじみの年俸制(成果主義)を導入している会社は全体の2割を越え、一人ひとりの働き手の実力と成果(会社への貢献)に応じて給与を決める会社が増えつつあります。
こうした日本の給与の決まり方の変化について、みんなでディベート(討論)*してみましょう。
論題
年功序列賃金か成果主義か?
ディベートルーム
私は に賛成です。
@ それぞれの給与制度のメリットとデメリットを考えよう。
最もすぐれたメリットは何か?
最も深刻なデメリットは何か?
A 君のいう理由を皆が納得するかな?
B 反対意見への反論は?
*福利厚生
経営者や従業員が安心して働ける職場を確保し、勤労意欲の高揚、組織の活性化を図るために、健康管理、社宅・寮、自己啓発支援、社員食堂、文化・体育・余暇施設、退職準備支援などの制度を福利厚生制度といいます。
*ディベート
討論ゲーム。論題に対して、肯定・否定側に分かれ、決められた時間を使って、意見を述べあう。それぞれのチームが、肯定側、否定側の両方を経験することによって、さまざまな考えがあることが納得できます。