第1章 シジョウとイチバ
1 価格
モノやサービスの値段はどうやって決まるの?
商品を売り買いする場のことを「市場」といいます。モノ・サービスの価格は、需要と供給を一致させるように決まります。需要は、決まった価格のもとで、買おうとする人が何人いて、それぞれいくつ買おうとするのかをあらわします。供給は、決まった価格のもとで、売りたいという人が何人いて、それぞれいくつ売ろうとするのかをあらわします。市場価格がどのようにして決まるのか、その仕組みについて学んでいきましょう。
1 シジョウとイチバ
「スーパーマーケット」を中国語では何というのでしょうか。答えは「超級市場」。……そのまま漢字をあてていますね。

▲魚市場でのセリの風景(大阪府下の泉佐野漁港)
さて、英語のマーケットの訳語である「市場」を、日本では、日常用語としてはイチバと読み、経済の専門用語としてはシジョウと読みます。
卸売市場である魚市場や青果市場では、セリ*で価格が決まります。小売店では、同じモノ・サービスを安く売っている店に客が集まります。客が来ないほうの店は、利益が薄くなっても価格を下げざるを得ません。
このように、同じモノ・サービスなら、必ず価格が等しくなるはずのことを「一物一価の法則」といいます。
2 市場価格の決まり方
やってみよう
@ 縦軸に価格、横軸に取引数量をとったグラフを書きます。
A 価格が上がれば、需要(買い手)は減るはずです。逆に、価格が下がれば、需要は増えるはずです。したがって、需要曲線*は右下がりになります。
B 価格が上がれば、供給(売り手)は増えるはずです。逆に、価格が下がれば、供給は減るはずです。したがって、供給曲線*は右上がりになります。
C 需要曲線と供給曲線が交わったところ、すなわち需要と供給が等しくなったところで、価格(P)と取引数量(X)が決まります。
▼下のアドバイスも参考にね!
やってみよう……アドバイス
「需要と供給の関係}のグラフがつくってあります。これを参考に要点を押さえていくのもいいでしょう。
需要と供給の関係(価格と取引数量)(グラフ)

解説
需要が供給を上回っていれば(価格がP1のとき)価格を押し上げる力が働きます。逆に、供給が需要を上回っていれば(価格がP2のとき)価格を押し下げる力が働きます。いずれの場合も、価格がPまで上がり下がりする結果、需要と供給は等しくなります。
つまり、Pという価格とXという取引量に落ち着くことになるのです。
このように、市場で需要と供給が調整される仕組みを「市場メカニズム」または「価格メカニズム」と呼びます。
3 価格や取引数量はどう変化する?
考えてみよう1
次のような場合、価格は上がるか下がるか、取引数量は増えるか減るかについて考えてみましょう。
@ 天候がよくレタスが豊作になり、レタスの供給が増えたとき。
・レタスの価格は[ ]がる。
・取引数量は[ ]る。
A 鰯(いわし)の水揚げが減り、鰯の供給が減ったとき。
・鰯の価格は がる。
・取引数量は る。
答え(模範解答)
考えてみよう1……@下 増え A上 減
解説
@の場合、需要が変わらずに供給が増えたので、需要曲線はもとのままで供給曲線が右に平行移動(シフト)することになります。その結果、例えばレタスの価格が1個200円だったのが、1個150円まで値下がりすることになり、レタスの取引量は増えます。
Aの場合、需要が変わらずに供給が減ったので、需要曲線はもとのままで、供給曲線が左にシフトすることになります。その結果、例えば、鰯の価格が5尾で200円だったのが、5尾で250円まで値上がりすることになり、鰯の取引量は減ります。

(参考)
アダム・スミス
(1723〜90年)
イギリスの学者で、「経済学の父」とされています。
神の見えざる手
アダム・スミスの著書「諸国民の富(国富論)」で、経済は自由放任にしておいても「神の見えざる手」によって利害は調整されると考えました。
*セリ
競り、競売のこと。商品を売る際、
一番高い買取価格(買値)を示した人に、商品を売る(落札する)方法のことです。
*需要曲線
価格と需要量の関係を図示したもので、一般には右下がりの曲線となります。
*供給曲線
価格と供給量の関係を図示したもので、一般には右上がりの曲線となります。
均衡価格
需要と供給が一致したときの価格のことです。
4 政府が関与する価格…公共料金
クイズ

次のうち、政府に届け出て認めてもらわないといけない価格と思うものに○印をつけましょう。
@ 野菜の価格 A 自動車の価格 B 水道料金
C 鉄道運賃 D 電話料金 E 映画料金
答え(模範解答)
●クイズ……BCD
解説
光熱水道料金、通信料金、交通運賃などは、生活必需品の価格であると同時に、供給側・売り手が独占になる傾向にあるため、値上げをする場合、政府(国や地方公共団体)に届け出て、許認可をもらうことが義務づけられています。これらの料金のことを「公共料金」といいます。政府の許認可を得るための手続きは、かつてに比べれば、各段に簡素化され、認可が決定するまでの時間も短くなりました。公共料金を値下げする場合にも、政府の許認可が必要です。
コラム
京都市の二重タクシー料金
京都市では、車も運転手のサービスもまったく同じタクシーなのに、約2割のタクシーが、その他のタクシーに比べて10%または12%の値下げをしています。タクシー運賃は、上限額以下の一定の範囲なら、細かい審査なしに認可される仕組みになっています。
5 消費者物価指数

基準となる年(例えば2000年)における、典型的な家計の消費支出額は、商品別の消費数量に同年の物価をかけ合わせることで求められます。この基準となる年と同じ商品別の消費数量に、比較する年(例えば2004年)の物価をかけ合わせれば、比較する年の消費支出がわかります。
両年の消費支出を比べることで、同じだけのモノ・サービスを消費するのに、それぞれいくらのお金がかかるのかがわかります。
これをわかりやすくするため、基準となる年の消費者物価を100とした指数で変化をあらわします。
考えてみよう2
@ 2000年(基準年)の消費支出額が358万円、2004年の消費支出額が349万円のとき、2004年の消費者物価指数はいくつになるでしょうか。
A 1980年の消費者物価指数が76.4でした。2000年(基準年)の家計の消費支出額が358万円のとき、1980年の消費支出額はいくらだったでしょうか。
▼下のアドバイスも参考にして計算しましょう!
考えてみよう2……アドバイス
@消費者物価指数は「ある時期の値÷基準の時期の値×100」で求められ、349÷358×100=97.5となり、4年間で2.5%下がったことになります。
A358×76.4÷100=274万円となります。
6 インフレ、デフレって何?
考えてみよう3

解説
物価が継続的に上昇し続けることを「インフレーション」(略してインフレ)といい、下落し続けることを「デフレーション」(デフレ)といいます。
インフレが起きると、お金の価値(モノ・サービスの購買力)が低下するので、お金を持っている人(預金者、年金生活者)が損をします。逆に、デフレが起きると、お金の価値が高まるので、たくさん預金を持っている人、年金生活者は得をします。損をするのは、不動産や株式で資産運用をしている人です。モノ・サービスの価格の下落と連動して、土地や株の価格も下がりがちだからです。
*消費者物価指数
総務省が毎月発表する統計で、家計が消費する500品目以上の価格を集計して算出しています。クリーニング代やタクシー代といったサービスの料金も含まれています。
(参考)
企業物価指数
日本銀行が毎月発表する統計で、企業間で取引される商品の価格に焦点を当てたもの。景気判断に活用されています。2002年までは「卸売物価指数」が使われていました。