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2004・08早稲田大学経済教育総合研究所シンポでの発表

日本における経済教育の現状と課題

東京都立西高等学校  新井 明

2 日本経済が直面する三つの課題と経済教育

 現在の日本社会のなかで,経済教育が担わなければならない課題を三点あげることからはじめたい。それぞれ,短期,中期,長期の課題である。

 まず,短期的な課題としては,「いまそこにある危機」への対応がある。カード破産に陥る若者や悪質商法にひっかかる若者は多い。ペイオフ完全解禁を目の前にして,資産管理をきちんと考え実行できることが必要となる。また,フリーター問題に象徴されるように,若者の失業率は高く,不安定就業を余儀なくされる若者も無視できない数となっている。

 これらの現象は,一言で言えば「市場経済の大海」に卒業後すぐ投げ込まれ,十分な泳ぎ方を教えてもらえなかった若者たちのおぼれかけた姿ではなかろうか。その点で,18歳段階でいかに経済への知識と知恵をもった若者を作ることができるのか,緊急の課題である。

 中期的な課題では,「失われた10年」の回復が目指されなければならない。周知のように「失われた10年」とは,日本の1990年代を指す言葉である。1990年,バブルがはじけて以来,財政面では200兆円近い公的資金を投入しながらもデフレ経済を脱出できなかったことを指している。これに対してアメリカ経済は1990年代,金融と情報での優位を背景に好調に推移した。この「失われた10年」の回復が小泉構造改革のねらいである。その意味では,小泉構造改革の是非の検討を含めて,日本経済の回復に経済教育面から何らかの対応が必要であることは言うまでもなかろう。しかし,アメリカがスランプ時代の1980年代,“Japanese Economy”(旧JCEE刊)という日本経済を対象とした教育テキストを開発して,日本経済の特質を分析しながら,そこから学び,アメリカ経済を立て直そうとしたものと同じ努力を残念ながら,私たち日本の経済教育の担当者たちはおこなってこなかったことは事実である。これに関しては,1980年代末,今はなき経済研究協会の夏のセミナーで,アメリカの経済教育について報告をしていた当時の千葉大学の島久代教授に,会場から,経済パフォーマンスが悪く問題をかかえているアメリカの経済教育を日本で学ぶ意味はあるのかという質問がされたことを思い出す。

 長期的な課題は,日本の長期的なトレンドのなかで,いかに活力ある経済社会を維持してゆくのかという課題である。少子高齢化の確実な進行が進んでいる。合計特殊出生率は2003年1.29人となった。日本の総人口も2006年をピークに減少に転じる。このような長期の衰退すら予想されるなかで,さらに進むであろうグローバル化に対応しつつ,企業家精神(entrepreneurship)や勤勉(industry)な精神と柔軟性をもった若者をいかに社会に輩出させるかが大きな課題となっている。しかし,この課題に関しても残念ながら十分な教育面での対応ができているとは言いがたい面をのこしている。

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日本における経済教育の現状と課題

  1. 1 はじめに
  2. 2 日本経済が直面する三つの課題と経済教育
  3. 3 制度面からみた日本の経済教育
  4. 4 経済理解力テストからみる日本の経済教育の問題点
  5. 5 日本の経済教育がこうなった原因
  6. 6 そしてこれから
  7. 7 おわりに
2007 © Akira Arai