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2003・10・11 日本社会科教育学会

ウエッブサイトを利用した経済学習の試み

          −「e-教室」一年の実験から−

2 「e-教室」と「経済と私」

 本論に行く前に,e-ラーニングに関して簡単に触れておきたい。e-ラーニングとは,森田2002によれば「何らかの形でネットワークを使う学習形態の総称」である。すなわち,インターネットを使った教育一般を指すことが多い。

 e-ラーニングは当初アメリカで始まり,遠隔地教育や企業内教育の手段として発達した。学校教育に関しては,e-ラーニングだけで大学院の課程を終え,学位を取得することもできるほどに発達をしている。

 わが国でも,東北大学,早稲田大学,日本大学などでe-ラーニングの教材が提供されており,日本大学の通信大学院「総合社会情報研究科」は大学院レベルの学習が可能になっている。高校レベルでも,不登校生徒を対象としたコースやアメリカでの卒業単位が取得できるコースなどが提供されている。

 その他,資格試験用にe-ラーニングのコンテンツを提供する予備校や通信添削会社なども登場しており,その拡大が注目されている産業分野となっている。アメリカでは2000年には約20億ドルの規模であったものが,2004年には150億ドル規模に拡大するとの予想すらあり,ITバブルではないが,e-ラーニングバブルすら予想される事態ともなっている。

さて,「e-教室」(http://www.e-kyoshitsu.org/)は,国立情報学研究所にサーバーをおいたウエッブ上の学習サイトの名称である。その目的,どのように組織され運用されているか,また,教室全体の構成などの概略に関しては主催者である同研究所の新井紀子助教授が『ネットの上に学びの場を作る』で概略が紹介されている(新井紀2003)。その特徴は,情報共有サイトのなかでの,マルチ方向の情報共有をめざす,会員制のサイトにおける学習活動である。

教室は2002年5月にスタートして,「さんすうの作文」「ガリレオ工房」などの教科に相当するいくつかの部屋と各教科の職員室,生徒が集まるHRなどによって構成されている。当初300人からスタートしたが,現在は250人が海外を含む全国から参加している。参加者のおおよその内訳は,中学生が約7割,高校生が2割,小学生を含むその他が1割程度である。また,ボランティア参加で教室のモデレーターとなっている社会人も自由に書き込みをして参加をしている。

「経済と私」はそのなかの,中高生向けの経済学習のサイトである。報告者は昨年2002年6月から「経済と私」の主担として,柳川範之東大助教授,栗原久信州大助教授ら協力者3名とともにボランティアで運営にあたってきた。この教室では,現在の公教育の教育システムとは相対的に独立しながらも,カリキュラムをもった学習を目指している。

そのなかで,「経済と私」では,次のような方針,すなわち「この教室では,ほぼ一年間で経済の見方・考え方の基礎をマスターするとともに,現在,日本や世界が抱えている経済問題をみんなで考え,議論してゆきながら,私にとって経済とは何か,経済を学ぶことで世界を豊かにしてゆくにはどうすればよいかを考えてゆきます」を掲げて,一年間で経済の基本的な概念や見方や考え方を学んでゆけるようなカリキュラムを用意して,学習をすすめた。

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ウエッブサイトを利用した経済学習の試み

  1. 1 はじめに
  2. 2 「e-教室」と「経済と私」
  3. 3 「経済と私」のカリキュラムと学習活動
  4. 4 一年の学習活動の実際
  5. 5 ケーススタディ「脱ダム宣言のキカイヒヨウ」
  6. 6 社会科教育とウエッブサイトでの学習
  7. 7 まとめと今後の課題
2007 © Akira Arai