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  1. けいかも

  2. 子どもと家族で考える。経済ってなんだろう?
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4 結果と課題

 授業の結果および評価は以下のようであった。一部を紹介する。

 学習内容に関して,非常に面白かったおよび面白かったの合計は80%であり,この学習は生徒に支持されたと判断できる。また,興味をもって取組めた活動(複数回答可)上位三つを上げると,@新しい商品やサービスを考えたこと,Aインターネットで情報収集したこと,B発表のためにパワーポイントでの資料を作成したこと,があがった。さらに,今回の学習活動で学んだことの上位三つでは,@新しい商品やサービスをどのようにして開発するがなんとなく分かった,A会社の仕組みについて前よりも理解できた,B新しいものを創りだす創造力や発想力がついた,があがっていた。活動面でも,内容面でも授業の意図を確実に汲み取っていることがわかる。

 生徒の自由記述からいくつかを紹介したい。

・実際に企業を起こすには、資本金を集めたり、コストと利潤を考えて値段を考えたりと、大変だということを学んだ。(生徒A)

・新しい商品が発売するまでどれほど大変かとてもよくわかった。ヒットをだすって本当に難しそうだ。(生徒B)

・リスクを負うことは怖いが、起業家として成功できたら、人生に充実感を得られると思う。(生徒C)

・自分達で会社を作るということがどのくらい難しいのかよくわかった。会社を作ろうと思ったら、それに先立つものや人がいろいろ必要。特に、特に、ひとのかかわりあいがとても重要だと思った。(生徒D)

・起業家は天才なのではない。一般人と違うのは、行動力と創造力ではないだろうか。(生徒E)

一方,課題も多く残されている。ここでは,三点あげておきたい。

第一は,時間の確保やみとおしを持った指導の必要性なことである。特にビジネスプラン作成時には相当の時間とリサーチをかけないと形にならない。

 第二は,ねらい到達点をはっきりさせる必要である。生徒のビジネスプランに対しては,どこまでリアティを持たせるのかにより,資金問題や会計知識なども必要になる。単なるアイディアの段階からどこを到達点にするのかによって指導が異なる。

 第三は,外部講師など外部からの協力者との連携である。この分野は普通科の教師一人では指導しきれない分野が多い。そのような場合に適切に対応できる外部講師群がサポーターとしているかいないかでは,学習効果が全く違ってくる。

5 提言とまとめ

 高等学校段階で経営教育を直接的に導入することは結論的には,難しい。ただし,経営学的な観点をもって学習することは十分可能である。現在の学習指導要領では,高等学校の公民科「政治・経済」はマクロ経済の観点で構成されている。したがって,経営学的要素を入れるには,ミクロ経済の観点から教科の再編成が必要となる。その過程で経営教育の導入が可能になろう。また,「現代社会」は自分が社会とどう関わるかの観点で内容が構成されているので,経営的要素の導入の可能性は高い。しかし,現場の教員は経営を専門的に学んでいないし,マクロ的な観点からのみ企業を見ることに慣れている。その現実から考えると,経営学サイドから,この「会社を作ろう」のような学習プログラム用意して現場に提言することが有効であろうと思われる。

 具体的には,今回の実験授業で取組まれたようなアントレ教育,現在焦眉の課題となっている金銭教育,キャリア教育など,「総合的な学習の時間」に活用できる学習プログラムの経営学からの提案がぜひなされることを今後期待したいと思う。そのことが,高等学校の普通科教育に経営学が根付く大きな契機になると思われる。

 なお,本稿で一部引用した授業のプロセス,生徒の授業評価,自由記述の全体は,立教大学アントレ教育研究会の報告書に収められている。参考にしていただければ幸いである。

            以上

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企業家教育の実践から見る高等学校における経営教育の課題

  1. 1 はじめに
  2. 2 高等学校における企業家教育の試み
  3. 3 授業の計画とその実際
  4. 4 結果と課題
  5. 5 提言とまとめ
2007 © Akira Arai